出版社内容情報
幻のロシア文学者を本邦初紹介。ペトログラードを彷徨う「名もなき詩人」の自死までをリリシズムと実験性とともに描くおそるべき名作
【著者紹介】
詩人、小説家。1899年、ペテルブルクにドイツ系軍人の父親とシベリア商人の娘である母親とのあいだに生まれる。920年代、「ペテルブルクにあったほぼ凡ての文学集団」に参加している。1934年、結核により死去。
内容説明
1920年代初頭のペトログラード。嘗ての帝都ペテルブルクはもうない。主人公テプチョールキンと彼を取り巻く友人たちはその見る影も無くなった町で最後の人文主義者=ルネサンス人という孤島となって、自らの居場所を探し続けた…幻のロシアの異才、90年の時をへて本邦初登場。破滅へ急ぐ詩人の彷徨をペテルブルクの妖しい煌きとともに描く、錯乱のロマネスク、驚異の傑作。
著者等紹介
ヴァーギノフ,コンスタンチン[ヴァーギノフ,コンスタンチン] [Вагинов,Константин]
1899‐1934。小説家、詩人。20年代、さまざまな文学グループに参加、ハルムスらと交わり、バフチンに評価される。小説に本書の他、『スヴィストノフの労働と日々』、『バンボチャーダ』他がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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梟をめぐる読書
17
1920年代の魔都ペテルブルクは、体制の変更と改革による文化的黄昏に覆われている。主人公テプチョールキンを含む《町で最後の人文主義者》の一派は其処に偉大なるギリシャ・ローマ帝国の没落を重ね、己の思索と詩作によって現実に抗おうとするが、やがて押し寄せる時の奔流がすべてを呑み込んでいく。ある男は画期的詩論の創造の道を諦め、ある女は結婚してミューズとしての聖性を失い、またある詩人にはついに一行も書かない日が訪れる…。嘗て学問や芸術に熱狂し、挫折と敗北を抱えて離れていった全ての人々に捧ぐ、恐るべき敗残と堕落の書。2014/03/18
ハッカ飴
2
私には難解。何回読んでもわかりそうにないな。2014/03/16
工藤 杳
1
インテリ=ディレッタントとしては、涙を浮かべて読むしかないというやつ...。文学の童貞インテリたちが、文学を擁護しよう、俺たちが最後の孤島だと怪気炎をあげるんだけども、だんだん生活(学生ども相手の講師職だとか不細工な嫁だとかキッチュだとか頭が禿げていくだとか)に負けていく。文学の死に方をまざまざと見る感じ。本はいつだって読まれなかった、という佐々木中が思い起こされる。これを読んだ文学系の大学院生は血を吐いて死んだという。2016/03/28
あーしぇ
1
読了。1920年代のペテルブルク。主人公たるテプチョールキンと街の「芸術家」たちは、移り変わる時代に翻弄されつつも、何かやりたい、残したいという思いばかりが募り、結局のところ何もできないまま、街と時代に埋もれていく。最後までぐだぐだとしている。彼らの、このうつうつとした感情は、読んでいるほうにも伝わってくる。何とも切ない。関係ないが、大阪市とサンクト・ペテルブルグ市は姉妹都市なのか。知らなかった。2014/04/02
H.S
0
まだソローキンのほうが好み2014/05/18