内容説明
60歳になって学校からリストラされた教師が、新生活の門出の夜、何者かに襲われる。病院で目覚めた彼に襲撃の記憶はなく、やがて彼は偶然出会った記憶係の女性に惹かれる自分に気づく。退院をきっかけに同居をはじめた末娘を始め、彼を取り巻く女たちとの葛藤を淡々と描きつつ、新しい人生の意味を浮かびあがらせる、名手アン・タイラーの新作。
著者等紹介
タイラー,アン[タイラー,アン][Tyler,Anne]
1941年、アメリカ中西部のミネアポリス生まれ。幼少期から11歳まで、クェーカーのコミュニティで徹底した自然志向の生活を送る。コロンビア大学でロシア文学を専攻し、1964年に最初の長篇を発表。1972年以降はボルティモアに定住し、同地を舞台にした作品を執筆する。82年『ここがホームシック・レストラン』以後、発表するすべての作品がベストセラーリストに入る人気作家となる。ピューリツァー賞など受賞多数
中野恵津子[ナカノエツコ]
翻訳家。1944年生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りつこ
14
些細な出来事を丁寧に描きながら大きな物語のうねりを作り出す。久しぶりのアンタイラーはやっぱり良かった。自分は人生をちゃんと生きてこなかったのではないか、たいせつなことを忘れているのではないか、老いを迎えてじたばたする姿が身につまされるけれど、少しおかしい。淡々としているのに時々涙がぶわっとでてくるような台詞やシーンがあって、良かったなあ。2011/10/16
Acha
13
ちぐはぐな、またはぎくしゃくとした関係が語られる。元妻、娘たち、孫、娘のボーイフレンド、風変わりな彼女。決して人付き合いがうまくはなさそうだが、クローズドではない主人公の来し方行く末。人生の後半に、これまで手からすり抜けてしまったものを想う姿。今回もとても面白く読む。読み終えて、ちょっと切ない。なんとなく泣きたくなるような気持ち。穏やかな日常の機微に心がふるえる心地よさ。That's アン・タイラー。2022/08/23
がぁ
10
登場人物のひとりひとりが丁寧に描きこまれているので、あまり起伏がなく長いストーリーでも最後まで読みきってしまう。本を閉じたときの満足感が常に変わらない、数少ない作家のひとりだと思う。暖かな陽だまりを探すような時間が得られる。2011/11/22
kri
9
職業的野心とか家族を育て養うとか、夢や目標の実現に努力とか…そんな時、人生の船には羅針盤がある。ある種の目的意識があるということ。リーアム(60才、バツ2の独身、レイオフされて無職)はしがらみもなく友人もほとんどなく、子どもたちとも距離を置き、自分しかない。羅針盤のない船だ。リーアムは哲学書を読み悠々と暮らすつもりでミニマムな隠遁生活に踏み出すが…頭部襲撃で記憶の一部を失い、自分という拠り所への不安を抱えた予想外の船出に。そして「記憶」と向き合い過去を振り返ることに…。さり気なく人生を教えてくれる話だな2019/05/31
umeko
9
家族形態は全く違う私の家族とも、どこか重なって見えるこの物語。共感できる部分も多く、改めて気付かされることも多かったです。日常がこんなにも面白く読める素材になるなんてと新鮮で、素敵な物語でした。2011/09/27
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