内容説明
スキャンダラスでセクシー。衝撃的な愛と変身の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
276
奇妙なタイトルだが、原題の"Truismes"も「私の牝豚」。ただし1語でのTruismesは見当たらず、truis(牝豚)mes(私の)といった合成語のようだ。さて内容はといえば、狼男とカフカの『変身』と『ボニーとクライド』と『ソドムの百二十日』とを混ぜたような、つまり混沌としたアナーキズム小説である。そして、精神的にも、さらには身体的にも人格は統体を保つことはできず、それはまた価値体系にも及ぶ。これがダリュセックのデビュー作だが、サガン以来との圧倒的な支持を受けながらも解釈や批評は未だ多様なようだ。2015/12/27
ケイ
153
善悪の基準、身を護る必然性、自尊心の大切さ。これらを学ぶことなく善良に生きたら彼女になるのだろうか。彼女から搾取していく経営者や男たちから、彼女は何物をも奪われない。彼らが苦しむような事で彼女は傷付かない。日々豚になっていくことさえ、彼女には受けとめるだけの強さがある。彼女は無意識のうちに仕返しをし、仁義を果たさせる。それを暖かく見守る私たち。豚と狼が、彼女とイヴァンが、ベッドで仲睦まじく絡み合っている幸せそうな残像が本を閉じても離れない。形而上学的でシニカルなユーモアセンスが溢れている2017/03/26
まふ
106
ブタに変身したうら若き女性の物語だが、全編エスプリ、ウィット、ロマン、ゼンスに溢れた見事な作品。高級香水店の「肉体サービス係(?)」で活躍する主人公が次第にブタに変身する。その遷移の描写がリアルで納得感大。人間に戻ったりまたブタに戻ったり忙しいが、次第に人間を離れてブタの世界に安住地を見出す…。作者はブタの特徴、生態(臭気、生存音、食物等)をよく研究しており、読者はその世界を堪能(?)できる!! 最後にイノシシの彼を見つけるまでの一生が破綻なく(?)描かれており、楽しい読書だった。 G556/1000。 2024/07/07
扉のこちら側
90
2016年1061冊め。【241/G1000】タイトルのめす豚は生き物としてのそれと娼婦的存在の女性を表す二重の記号。カフカの『変身』を彷彿とさせる作品は他にもあるけれど、変身というものをここまで直球に書いたものはそんなに読んだことがない気がする。フェミニズム的なテーマもあって、著者によると「教養のない女性がフランスで生きるとしてらこういうところに落ち着くだろう」という話。2016/12/11
えりか
56
もう少しぽっちゃりで健康的なのが好きだななんていってる男よ、どこまでがぽっちゃりなんだい?豚になっても愛してくれますか?ドイツには虫になる男がいるかと思えば、フランスには豚になる女がいる。悲しい物語。疑うこともせず懸命に生きた女の物語。卑しさとは何だろうか。生きるために花やドングリを食い散らかすことは卑しいだろうか。卑しさとは自らの欲求のために他人を傷つけ搾取し続けることではないだろうか。彼女はただ純粋に生き、愛を欲していただけである。人間は卑しいと、豚であることに安らぎを覚えてゆく彼女が教えてくれる。2017/09/12
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