内容説明
SD4・右上第一小臼歯。この歯が痛むとき必ず、要人が暗殺される!そして、IS1・左下中切歯。この歯が黒ずんだとき、不倫の愛がはじまった。続々と登場してはわたしの運命を狂わせる奇人歯科医たち。すべてが「歯」しわざなのか。東欧的想像力が生んだ寓意と奇想あふれる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
113
私小説ならぬ幻惑的な『歯小説』。主人公はSGというスパイの歯。SGは語り部。彼は指揮者の顔を持つスパイ『マエストロ』の相棒。タクトの代りに口内の32本の白い鍵盤が、痛みと共に彼の物語を奏でる。潜入する先々でマッドな歯科医を呼び、オーマイガッなドラマを紡ぎ出す。チェス好きな歯科医は「勝てば治療費無料、負ければ治療は延期」と治療台での勝負を強要する。ある医者は耳元で「妻を殺してくれれば治療費は一生タダ」と囁く。仕事は地味だが女性遍歴は華やかなSGを忍耐強く待つ妻。たとえ32本の歯が彼の元を去っても。ブラボー♪2016/06/02
kaze
12
感想書くの難しい。一言で言うと、変な小説。まず歯列図が提示され、歯の1本1本に振られた記号ごとにその歯にまつわる思い出が断片的に語られるという、非常に変わった形式。語り手の職業はタイトルで暗示されているように恐らくスパイなのだろうけれど、本文では一切明かされていない。語られるのは主に虫歯(と歯周病)の状況と治療、女性遍歴。その合間によくわからん哲学的思考と漠とした世界情勢が挟まれる。人生は虫歯との戦いであり、世界は紛争に満ちている。2022/01/30
らびぞう
11
歯とスパイ、どんな展開になるのやらと思っていたら、ジェームズ・ボンドばりのスパイものではなかった。しかし、ボンドと同様、女性遍歴がある。そんな女性との思い出と、自分の歯の痛み、そうして、歯と別れと、女との別れ。それらを、歯につけた記号とともに、時たま、自分の歯を鏡で見たり、舌で確かめたりしながら、読み進めていった。2021/04/26
マサ
3
自分の歯の状態と世界情勢や事件の間に相関関係があると考えるところがまず可笑しい。そもそも「わたし」の歯は悲惨な状態でトラブル(歯医者通い)が日常的なのだが。面白いのは歯とともに語られる彼の秘密の任務のことだったり、彼の恋愛事情だったり。そこに何やら怪しげな哲学的?な言い訳をするのがまた面白い。2025/04/28
yurari
1
妙な小説。冒頭、歯のイラストとともに、この小説は現代のコンピューターのようなもの、1本1本の歯を通して主人公S・Gの人生の全体像にアクセス出来る仕組み、とあるが、全部読んでもS・Gがどんな人物だったのか理解できなかった。どうやら共産主義下にあるヨーロッパの某国のスパイらしいが、具体的に何をしているかは不明。マエストロGなる人物からの指令を受け取る位しか仕事をしていないような…。で、仕事と家庭そっちのけで情事にふける。虫歯だらけ、性格も歪んでいて女性にモテる要素はなさそうなのに何故。2022/03/17