内容説明
現代人の恋愛の根底にひそむ亀裂を、官能的にそして残酷に描き尽した稀有な作品。デュラスの自他ともに認める幻の最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
汀
31
《わたしはエレーヌ・ラゴネルを一緒に連れて行きたい、あそこに、毎晩わたしが眼を閉じて、わが身に快楽をあたえてもらい、声をあげているあそこに。わたしはわたしの上に乗っかってあれをする男にエレーヌ・ラゴネルを与えて、今度は彼女の上であれをさせたい》(デュラス『愛人』清水徹訳) わたしがロルに初めてあったのは一年前、大学図書館で古くなったため配布されていた『思想』2012年10月号を読んだときだった。ロルについて書かれた論文が衝撃的で、以来ずっと本作を読んでみたかった。愛の消失の瞬間。アンヌ=マリ・ストレッテー2016/06/06
34
21
ルネ・ジラールによると、上質の小説を他の陳腐なくずどもから区別するのは簡単である。登場人物の「欲望」の働き方が、二者関係からではなく三者関係から構成されていることを指摘できればよい。三者関係の欲望の通常のモードをなすのは嫉妬と惚れ込みの情動だが、この透明な小説では、自分では愛する術を知らない女、「ロル」が愛の喜悦をはじめて覚えたのは、若く裕福なフィアンセが年増女によって奪い去られたときだった。ロルにとって、愛し〈かつ〉存在するためには、自分の姿を他から隠しておかなければならないかのようにすべては進行する。2017/08/12
manabu
4
立木康介の『狂気の愛、狂女への愛、狂気のなかの愛』の中で、ラカンの宮廷愛にも絡めて詳しく解説されていた本。自分の主体が肉体と結びつかず、その欠如を他人の身体で埋めて欲望する愛。語り手の「私」の視点を通したロルの視点に現れるジャック・ホールド =「私」など、不思議な世界が展開する。物語の最後に、ロルはそれまで友人のタチアナの肉体を通して欲望の対象にしていたタチアナの愛人ジャックと自らの肉体で結びつく運命を、それを予感しながらなぜ受け入れたのだろう。それは彼女を壊してしまうに違いないのに。2019/05/14
ぽん@Pの姪っ子
1
◯2024/11/08
あらき
1
この間観た映画で言及されていたので軽い気持ちで読んでみたら、すごく難解で手こずってしまった……。文体は好きだったけど、何のこと言ってるのかわからなかったり。こういう圧倒される読書もいいですよね(半ば負け惜しみ)2022/11/08