出版社内容情報
「これほどの強度の小説は滅多にないし、ここには真の意味での熊がいる。」ーー古川日出男
「いつかこんな夢の中に自分もいたような気がする。止まらない余震のような小説。」ーー斎藤真理子
生きるためにもがく者、
死ぬための場所を探す者ーー
暴力から逃れた女を匿う山奥の家に暮らす、リツとアイ。
津波ですべてを失ったサキと、災後の移住者であるヒロ。
震災から7年の地で、身元不明の幼子をめぐり、4人の女たちの運命が、いま、動き出す。
内容説明
生きるためにもがく者、死ぬための場所を探す者。暴力から逃れた女を匿う山奥の家に暮らす、リツとアイ。津波ですべてを失ったサキと、災後の移住者であるヒロ。震災から7年の地で、身元不明の幼子をめぐり、4人の女たちの運命が、いま、動きだす。
著者等紹介
木村紅美[キムラクミ]
1976年生まれ。2006年、「風化する女」で第一〇二回文學界新人賞を受賞しデビュー。2022年、『あなたに安全な人』で第三二回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
82
タイトルからハートウォーミングな作品かと思ったら違った。山奥にあり、行き場のない女性たちを匿うためのシェルター「丘の家」。そこで共同生活をしている先生と、古株で気難しいリツと、アイの三人は、捨てられていた赤子を下界から拾ってきて、ユキと名づけ隠れて育てるようになる。リツとアイ、産みの親であるサキ、サキに協力したヒロも含め、合計四人の視点をわたり歩くかたちで話は進んでいく。彼女たちはそれぞれに張り詰めた日々を生きていて、つねにどこか危うさ漂う空気で満ちている。幸せについて考えさせられる本だった。2025/04/10
ケイティ
36
とてもよかった。読み応えのある深い余韻。世間的には問題視されるような起こった、起こした出来事含めて、誰も断罪しない描き方が絶妙だった。人にはそれぞれ事情があり、傷の深さは当人しか決められない。何が正しい、どうすればよかったかと人や自分への贖罪を抱えながらも、そうしか生きられないどうしようもなさが真に迫る。人物描写と視点が多面的でフラットだが、それぞれの感情が痛いほど伝わる文章に引き込まれた。インタビューで木村さんは「ファンタジックな設定」でもあると語っていたが、それそれが抱える痛みはとても現実的。2025/04/09
さちこ
33
読んでいくうちにわかってくる。テーマは重かった。自分が恵まれた子供時代を過ごした事に気付いた。2025/03/09
すももんが
26
人間の重く湿った生々しい生態が、自然の一部としてふんわりと包まれている。読んでいて嫌悪感を覚えない紙一重のところで踏みとどまっている感じで、さらさらと読めた。 自然の豊かさや恵みに安堵を感じる一方、因果応報の理からは逃れられない怖さと表裏一体であることを知らされる。恐ろしいのに清々しい読後感。2025/06/10
こまり
22
確か新聞の書評を見て面白そうと思い予約した本。読み進めるのが苦痛になったけれど、途中で止められず最後まで読んだのは何処かに物語の魅力があったからなのか…よくわからない。前にもこの人の本を読んで不穏な気持ちになった事を思い出した。丘の上の自給自足に近い暮らしぶりには少し興味を持ったけれど。著者最高傑作と帯に書かれているので傑作なのかもしれない。心地悪さを味わって欲しいのが本意ならばそれは達成されていると思う。 2025/05/24
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