内容説明
舞台は南太平洋の楽園、ボラ・ボラ島。白人女性“ミスユニバース”を巡って10人の男が競う。Mr.L.A.、Mr.ロンドン、そしてMr.東京―やがてショーの視聴者たちは「自分だけのDTOPIA(デートピア)」を編集しはじめ、楽園の時間は膨張する。第46回野間文芸新人賞候補作。第172回芥川賞受賞。
著者等紹介
安堂ホセ[アンドウホセ]
1994年、東京都生まれ。2022年、『ジャクソンひとり』で第59回文藝賞を受賞しデビュー。同作は2023年に第168回芥川賞候補、また2024年にフランス語版となる「Juste Jackson」がマルキ・ド・サド賞の候補となった。2023年、2作目となる『迷彩色の男』を発表。同作は2024年に170回芥川賞候補となり、デビュー以来2作連続の芥川賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
372
小説の枠組はボラボラ島で行われた「デートピア」。世界中から集められた(とはいっても偏りがあり、そのことは作中で指摘もされる)男たちが10人。そして、たった一人のかぐや姫、ミスユニバースといった陣容。そして、彼らは型のどとく、そこで美女の争奪戦を繰り広げるのである。ところが、内実の物語は、その参加者の一人であるキースの少年時から今にいたる屈折した物語と、早くから去勢願望を持っていたモモの物語である。それなら、外枠の物語は必要なのかとの疑問も当然に生じてくる。また、キースの睾丸摘出手術の持つ意味はそもそも⇒2025/02/15
starbro
243
安堂 ホセ、3作目です。 2年連続での野間文芸新人賞候補作、恋愛リアリティショー×●丸摘出小説、衝撃作でした。 本書も芥川賞候補作となるかも知れません。 タヒチに行ったことがあるので、親近感が湧きました。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000761.000012754.html 【読メエロ部】2024/11/19
R
142
あるリアリティショウに現れた日本人出演者の物語、でもあったんだが途中からまったく違う話しに飛んで跳ねて、気づいたら合流していて、ひっかきまわされる小説だった。ゲームとしてのリアリティショウの話しでひきつけられるのだが、その実、これを構成する様々な要素が、性別嗜好別国籍別、あらゆるカテゴリとのかけ合わせによってつくられていて、そこに潜むものが、身に覚えのある居心地の悪いもののように見た。純ジャパという単語を初めて知ったが、それが語られる世界線を見ることで自分の差別意識が透けたようで怖かった。2025/02/11
シナモン
124
きらびやかな恋愛リアリティショーからのまさかの展開。いろんな社会問題を絡ませながら物語は進む。途中何度も挫折しそうになったけどなんとか読了…でも言いたいことの半分も理解できてないように思う🥲なんというか刺激的な一冊だった。芥川賞候補作。 2025/01/15
Apple
114
きっと読む人によって少しずつ印象に残る部分が異なってくるような小説なのではないかと感じました。私はボラ・ボラの現地人マルセルの言っていることが印象に残りました。「ミックスの子供って,両方の気持ちの間で揺れ動きながら結局どちらのことも崩壊させずに架け橋になることを期待されるだろ」メインキャラの一人・キースをどうも捕え損なった私ですが、なにか通常あるステップを飛び越えてしまったような人物なのかなと思いました。何かの象徴らしき描写が絶え間なく現れる、読むのに体力を要すると感じた作品でした。2025/02/17