出版社内容情報
【目次】
内容説明
森川六花、17歳の高校2年生。ふざけがちな母、穏やかな父、「お姫様」のお姉ちゃん、朝でも夜でもいつでも来るやさしいケイティ。片思いしている同級生・森沢とはバカ話でいつまででも話せて、なんだかいい感じ。平和な日常に見えるけど、この家には掘り出してはいけない蔓がある―。氷室冴子青春文学賞第5回準大賞。
著者等紹介
桃実るは[モモミルハ]
埼玉県生まれ。応用生物科学科卒。2023年「やさしい雪が降りますように」で第5回氷室冴子青春文学賞準大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bunmei
76
『氷室冴子青春文学賞』受賞、初読み作家の作品。当初、女子高生を主人公にした穏やかな淡い胸キュンな青春群像劇と思いきや、ずっと我慢して隠し持っている、心の襞を抉り出すような、鋭い痛みが走り抜ける切ない青春小説だった。それは、レイプ、児童虐待、DV、痴漢等の不条理な体験が生み出すトラウマが、『蔓』の様に精神的な苦痛となり、心に蔓延っていくもの。そんな苦悩を抱える人々を、一生懸命に支えて見守ろうとする一途な優しさが、『生きる力』となって、新たな扉を開く後押しになるとも感じた。若者の瑞々しい感性と姿が残る一冊。2025/12/05
まる子
26
第5回氷室冴子賞準大賞(大賞は『愛ちゃんのモテる人生』)のこちらの帯には「町田そのこさん激賞」とあった。埼玉県に住む六花の家族。父母姉とそれぞれ何かを隠しているような?それを「蔓」と表現。性被害、虐待、DV、恋をからめて物語はすすむ。心に傷を持つ人は見た目ではわからない。どこにでもありそうな家族の「蔓」と、そこから再生しようとする姉。終盤では羊蹄山、札幌の南西と北海道が関係する。彼女たちにとって雪は優しさをもたらすものだった。雪の別称「六花」、晴れた日に降る雪「風花」と、読みが違うけれど雪の姉妹と青春❄️2025/11/12
かな
25
人それぞれ、悩みや人に言えないことを抱えていることがあると思う。森川六花の家族は一見仲の良い家族に見えるが、触れてはいけないなにかがある。森川家に昼夜を問わず通い詰めている女装家のケイティ。六花が出会った虐待されている少女。六花の惹かれている同級生の森沢。森沢との何気ないやりとりにも微妙な影が差す。みんなが何かを隠しながら明るく振り舞おうとする。頻繁に出てくる「蔓」を掘り下げてはいけない何かとは。六花と姉の風花、そしてケイティ、羊蹄山を前に止まっていた時が動きだす。心痛く、そして切ない青春物語でした。2025/12/03
わむう
24
高校生の六花。温かくて平凡な家庭のように思えるが、昔、姉は性被害にあったせいで家の中から出ることができない。傷に触れないように楽しそうに振る舞ってだけなのだった。頻繁に家にやってくる女装家のケイティと同級生の森沢と瑠璃菜の存在に助けられている六花。優しい人たちに囲まれて楽しく過ごしていますが、近所で虐待されている女の子に出会い、閉じ込めていた記憶が蘇る。六花と友達たちとの明るい会話の裏で、いつも暗い影が存在していて物語に深みを与えています。2回ほど泣いてしまう場面がありました。恋っていいな。再読したい。 2025/11/01
akiᵕ̈
22
どこにでもいるような高校生たちの日常。世の中の不満を言い合ったりふざけ合って笑ったり。そんな高校生の六花の淡い恋心と、そこに踏み込む勇気が持てない六花の家族に起きた事や、性被害や性差別、虐待など世の中の不条理を絡めて描かれている。自分の中にある苦しみと対峙しながら周りには悟られないよう、気を遣わせないよう振る舞うことの辛さがひしひしと伝わってもくる。六花とじゃれ合う森沢や優しいケイティも良い味出してて救われるけど、彼らの事情もまた苦しい。側で見守ってくれる人がいる安心感は、一歩踏み出せる原動力にもなる。2025/12/07




