内容説明
私たちは遺伝子だけじゃなく、身を包むものでも時間をつなげていくのだ。やわらかなきらめきを放つ小説と短歌で紡ぐ、服飾にまつわる「喪失と再生」の18の物語。
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
歌人、作家。広島県生まれ。1996年、第七回歌壇賞、2016年、『いとの森の家』(ポプラ社)で第三一回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
123
ふわっとくる一冊。針と糸で紡ぐ手芸の世界を東直子さんが丁寧に言葉で紡いでくれた物語。手仕事好きとしてはめちゃくちゃ癒される時間だったな。素敵な言葉たちで埋め尽くしてくれて、何度もふわっとさせてくれてありがとうございますの気持ちでいっぱい。時にどこか遠い異国を思わせる、そんな設定も好き。ひと針にいろいろな思いが込められていて、出来上がるまでにその人だけの優しさや涙の思い出が詰め込まれていくんだろうなって思うとほっこり。今、自分が編んでいるものにも愛おしさが溢れた。言葉も糸も 結び連なる世界は 煌めき無限大。2024/11/13
Ikutan
75
針と糸と布。ただ手を動かしていれば何かができあがり、心が満たされていく。うっとりするやわらかな表紙を捲ると、そんな手芸全般への愛が詰まった掌編が18編。そのひとつひとつに一編の短歌が添えられています。誰かのためにコツコツ動かす手作業には、それぞれ思いや願いが込められ、だからそこにはたくさんの物語が存在するんですね。短いながらぐっと詰まっていて、どのお話も優しい気持ちになれます。特に死者の存在が大きく感じられる『マルちゃんのリボン』『ココさんの心臓』は心に沁みました。ほっと心温まる、今の季節におすすめです。2024/10/28
konoha
60
素敵な本でうっとり。編み物、刺繍など手芸をテーマにした短編に憧れや喜び、切なさが詰まっている。1話が数ページで最後に短歌がある。細やかで豊かなドラマを作り上げる想像力に驚く。あとがきを読むと作者は手芸が好きらしい。手芸好きな人も納得のいく描写だと思う。ファンタジーすぎない世界観、ピュアで少し風変わりな登場人物がいい。双子のサラとアンのようにずっと針仕事をして暮らせたら。動物や人の服を作るお店、蜘蛛の巣を編む編み物教室、アイロンで鶴を織るクリーニング屋さん。この世界に住みたい。2024/10/16
よこたん
44
“布の表面が、わずかにけばだっている。頬にあててみると、やわらかくて、あたたかく、気が遠くなるくらいやさしいものに包まれている気がした。「ミルミルさんの安眠枕」” 枕難民の私は、この枕が欲しくてたまらない。少し肌寒い季節に手に取れた幸せよ。もう、表紙から惹きこまれ小さな18篇の物語+短歌世界にふうわりと包みこまれた。布と針と糸、ひとつひとつ根気よく手仕事で仕立てられたものには、作り手と、身に着ける者の想いが混じり合う。時の流れが両者を分かつとも、それは消えはしない。「イルさんのたんぽぽ畑」もとても好き。2024/10/31
りんご
40
「手芸全般への愛を込めて書いた本」とあとがきにある通りの本。雑な手芸は好きですが、それ故に制作物にはさして思い入れがなく、作った直後に捨てることも可能。最近新しい単語「パンチニードル」を知った。試しにブスブス何か作ってみたい。電車のお供にぴったりでした。2024/12/16
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