内容説明
私はかかってしまったのだ、「百文字病」なるものに。「百文字病」を患った作家が病膏肓に入り、錬成し続けたのは、二百篇の「三行」幻想譚。著者初の魅惑のショートショート集。
著者等紹介
大濱普美子[オオハマフミコ]
1958年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部文学科フランス文学専攻卒。87年、パリ第七大学“外国語としてのフランス語”修士課程修了。95年よりドイツ在住。22年刊行の第三短篇集『陽だまりの果て』で第五〇回泉鏡花文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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吉田あや
47
北野勇作氏の100文字シリーズ本から「百文字病」に罹患し、病膏肓に入る状態になった大濱氏。百文字病はその後変異株を形成し、更に煮詰めた約60文字へと変容を遂げ、三行で完結する幻想譚をひたすらに生み出した。たった三行、されど三行。極限まで濃縮された物語は受け取った読者の中でビッグバンを起こすも良し、ゾッとしながら足早に駆け抜けるも良し、世にも奇妙な風味、ヒッチコック風味、怪談風味とフレーバーもそれぞれに、その余韻は波紋を作り続けていく。(⇒)2024/12/20
あじ
24
100文字SFの北野勇作さんに感化され、大濱さんは100文字怪を見出したと。但し文字の大きい(本人曰く変異株)3行なので、約60文字で完成形。200にも及ぶ物語の種まきはしたけれども、あとはほったらかしのSS(世の中あらゆるほったらかしなんちゃらが流行っているよね)。これ“返歌”形式でどなたかとタッグを組んで膨らませたら面白いかも。ゲストを呼んでもいいし。装幀画の方も【3】縛りが凄くて、爪、ひげ、ダイヤ、色………全体でⅢを表していてなかなか。日常のスキマ時間で読むのに、もってこいの本ですね。2024/10/07
きあら
22
ゾクッとする話、シュールで不条理な話、よく分からない話。ちょっと"怪"な話を全て3行で表した本。100文字シリーズを読んだのをきっかけに百文字菌に罹患した作者は、変異株が形成され百文字が三行(60文字)に変容したそう。60文字といえば、ボストの文字制限の半分以下。それだけの文字数でもこれだけ表現できるのか。2024/09/22
メタボン
18
☆☆ 三行だと物語の「種」にとどまる。やはり「枝葉」を楽しみたいところ。泉鏡花文学賞受賞作家には、本物の物語を求めたい。正直がっかり。2024/09/07
練りようかん
14
ショートショート集。僅か三行約六十文字で立ち上がる怪異。喜々として読み進め五つめの二行に目がとまった。怖い。まるでその古い日記帳を開いてるような錯覚に陥り、幻想の海に足が入ってしまったと思った。二百もの作品がざぶんざぶんとくる。多く持つと管理が困るオチ、なぜ自分の投げた石だけ落ちた音がしないのかは特に余韻が深く、“背中から下ろした重たいの”は一時という限定がそれこそ胸を重くして、週末のないカレンダーは誰かの心の中を具現化しているようでひどく現実を感じパンチがあった。新分野の発見にホクホク、面白かった。2025/03/25