内容説明
日当7500円のバイトに遅刻しないため2000円払ってタクシーに乗り、スマホで消費者金融のアプリとマッチングアプリを交互に見る生活を送る、買い物依存で性依存の美帆。両親は貧乏で不仲。バイト先で再会した元同級生の宇津木は、筋金入りのストーカー。アプリで知り合ったアメと刹那的なセックスをし、ほとんど知らないベトナム料理屋の店員ナムちゃんが「唯一の友達」。その人生の歯車は、あるひとつの死をきっかけに急激に加速して―。地獄へと爆進する美帆と、全員が常識外れの登場人物たちを、軽やかな文体で活写する衝撃の問題作。第60回文藝賞優秀作。
著者等紹介
図野象[ズノショウ]
1988年、大阪府生まれ。2023年、「おわりのそこみえ」で第六〇回文藝賞優秀作を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
machi☺︎︎゛
90
日当7500円のバイトに遅刻しないよう2000円払いタクシーで行く美帆。そして買い物依存症と性依存で借金もある。元恋人がストーカーで親は2人揃ってクズ。マッチングアプリで知り合ったバンドマン風のアメとズルズル関係を続けている。ほんとタイトル通りのおわりのそこみえ。だけどある1人の死をきっかけに美帆の回りが変わっていく。そして真実を知らされた美帆自身も普通の精神を知っていく。むちゃくちゃな設定だけど刺さる子には刺さるような作品。私は普通に物語として楽しめた。2024/05/23
Vakira
81
いや、これ面白い。買い物&セックス依存症の25歳の女性が主人公。作者は男性なのにこの女性のクズなのに生き生きとしたキャラがリアル。実際にいそう。そんな女性の生活ドラマ、それだけなら何とか書けそうだ。と、思いきや、ちゃんと事件が発生します。家族、友人、恋人ってどういうこと?これを考えさせられる問題作にも感じる。更にこの事件のどんでん返し。物語としてのオチ。限られたページ数の中でうまくまとめられてます。キャラの作りかた。リアルな心情表現。感心しました。これも、芥川賞受賞作より面白かったかも。2023/12/10
えんちゃん
71
これまたタイトル借り。買物&セックス依存性で親も貧乏で友達いなくて頭おかしくてメンヘラクソビッチの美帆25歳の物語。登場人物全員イカレでこの上なく地獄でポップでキュート。たまにぶち込んでくる文学的文章が宝石のように輝く。なんなのこれは。令和の綿矢りさ的な?と思ったけど全然もっとイカれてた。この前読んだ『無敵の犬の夜』って児童書だっけと思えるほどの衝撃。2024/01/11
いっち
59
タイトルがひらがなだからか、柔らかい印象を受ける。が、やわらかくない。登場人物は大抵狂ってる。主人公は借金がかさむ。バイトはクビになり、友達の彼氏と浮気をする。父は主人公の手作りケーキを食べず、母と喧嘩をし、主人公が火種を食らう。友達は見返りのないクズ男のために、広い部屋を借りて、金がない。主人公をストーカーする同級生は、寒空の中、ホテルで男と交わる主人公を見張る。狂ってるが嫌いにはなれない。愛すべき人物とすら思える。主人公の手作りケーキを発端に、父母が口論し、子育てについて争う展開が滑稽で、面白かった。2024/01/21
あんこ
55
以前読んだ「回答者は走ってください」と同時に文藝賞優秀作になった作品。こっちのほうが意味わかる分好き。25歳の美帆は欲しくもないものを買いまくり借金まみれ、マッチングアプリで男を漁って寝る生活。両親は貧乏で不仲。将来のことなんか考えない、どうしようもなくなれば死ねばいいと思ってる。でも地獄へ一直線の彼女のことを大事に思う人もいる。最後はどうなったかわからないけど、生きろと思う。2024/02/22