内容説明
中三の夏休み、蒼子の母が元同僚で余命わずかのバナミさんをさらってきた。なんでうち。なんで今。腹を立てる蒼子だったが、ひょんなことから一緒に受験勉強に励むようになり―受賞作「私が鳥のときは」。英語の授業は気づまりだし、部活は基礎練ばかり。「社会」というもののハードさに気づきはじめた、中一のバナミと友人たち。夏休み、お屋敷に暮らす老婦人・英子さんと出会って―書き下ろし「アイムアハッピー・フォーエバー」。軽やかに瑞々しく、世界をあざやかに変える傑作青春小説、誕生!第4回氷室冴子青春文学賞大賞作。少女と元少女たちに訪れた、奇跡のような夏の物語。
著者等紹介
平戸萌[ヒラトモエ]
1983年、神奈川県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。2014年度「オーバー・ザ・カウンター」、2018年度「春の朝」(安住蕗子名義)ですばる文学賞最終候補。2022年「私が鳥のときは」で第4回氷室冴子青春文学賞大賞を受賞、2023年本書でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
89
シスターフッド系。明るくてガサツだけどどこか憎めない「バナミ」の物語が2編▽『私が鳥のときは』「母がその人をさらってきたのは、蒼子(そうこ)が中三のときだった」その人“バナミ”は余命3ヶ月で、家族が近所にいるのに家出してきた。夏休みになり父と弟は祖父母の家に行き、母と蒼子がバナミを介護する▽『アイムアハッピー・フォーエバー』バナミは中1で、軟式テニス部の理不尽な上下関係に不満を持っていた。近所の豪邸の庭のテニスコートを借りようと、家主の女性と親しくなる▽いじめ、DV、女性の生き方など濃い内容でした。良本2024/04/07
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
84
(2023-154)【図書館本】ある日、母が仕事仲間のバナミさんを家に連れて帰って来た。しかも彼女は末期癌患者で余命三ヶ月という。無二の親友だとか、天涯孤独の身ならばまだしも、単なる仕事仲間でしかも彼女には夫も子供もいると言う。しかも蒼子は受験生。これでは蒼子でなくても「なんで私の家に、こんな人が!」と怒るのも無理はない。そう思いながら読んでいたが、次第にもう少しこのままこの生活が続いていてもいいんじゃないかと思えるようになったのは不思議だ。実際に蒼子と同世代の読書が読んだらどう感じるだろうか?★★★+2023/12/26
花ママ
73
主人公蒼子中3夏休みに、いきなり母親が連れてきたのは、余命宣告を受けているバナミ。父親と弟は、この事態に耐えられず早々祖母のところに避難。女3人の共同生活が始まる。バナミには夫も子どももいるのに・・あり得ないような設定で物語が始まり、どう展開していくのかと半信半疑で読み進んでいくうちに、グイグイ引き込まれた。最後にすべて合点がいく結末を迎え、バナミのことが好きになった。また、蒼子とヒナの未来が明るいものになりますようにと願わずにはいられなかった。バナミの中1時代の話は、バナミ青春の真っ只中って感じだった。2024/02/04
R
68
なんてことはない現代劇、と展開については思うのだけど、決して主題ではないから語らない背景が重く暗く、多くの問題を扱っていて、そういうことがあっても、なんてことない日常を送っているという日々を切り取った話しだった。知らないおばさんを母親がさらってきた、この事態がどうかしているけど、それを普通に受け入れて、まぁそうなるなという日常に落ち着いていき、娘は学校に身の置き所がなくなっていて、だからといって毎日は続くのだからどうするか生きていく、結末は寂しいはずなのに清々しい。よい物語だった。2024/05/25
はる
67
第4回氷室冴子青春文学賞大賞受賞作。良かったです。切なくも爽やかな読後感。中三の夏休み、母が元同僚で余命わずかのバナミさんをさらってきた……。これがデビュー作ということですが、手馴れた感じで物語の構成も巧み、人物造形もしっかりしている。青春時代の輝きと痛みを、繊細な筆致で描き出しています。友人同士のわちゃわちゃした雰囲気が懐かしく、読んでいるだけで楽しかった。おすすめです。2024/01/04