出版社内容情報
「呪なのか祝(しゅく)なのかもわからない言葉が今しばらくはこの世に残されている」(本文より)――9つの世界で放たれた「言葉」が時空を超え、波紋のように響き合う傑作小説!
内容説明
呪なのか祝なのか。「言葉」に呼び出され、結ぼれ合う9つの物語。
著者等紹介
高原英理[タカハラエイリ]
1959年生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了(価値システム専攻)。博士(学術)。1985年第1回幻想文学新人賞受賞。1996年第39回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まみ
14
「解釈とは投げ出された無関係の破片である言葉を繕い繋げてあたかも連鎖するもののように仕立てることである。」短篇9篇、祝詞のような呪詛のような言葉が交錯する。目がすべって理解が追いつかない部分もあったけどたゆたうように読んだ。つるつるとしたカバーと真っ黒な見返し、金色の花布が素敵な本。2023/09/24
佐倉
11
夢の中で見るような言葉が連なっていく文体による幻想連作集。リストカット癖のある少女が偶然受け取った言葉をブログに発表したものが新興宗教となり、多くの人々に時と空間を超えて言葉を届けていく『リスカ』。それはある者には架空の小説として『正四面体の華』、故人の言葉として『精霊の語彙』、詩として『縞模様の時間』。『定命さだまらず』はその始原にある願い…と言う風に読めるしあるいは受け取ったものを物語にしただけなのかもしれない。いや、それこほ『すべて明確に言い切ろうとした時の言い切れないところに魂はある』のだろうか。2024/07/16
ハルト
11
読了:◎ 魂の祝福。言葉の祝福。精神と身体の言祝ぎ。思考することで産まれいずるものたちの言葉の連なりが、波のように大となり小となり、覆い被さってくる。それは連作の作品たちにも云えることで、かそけき繋がりが連面とあり、不可思議な現実感とそれに相反する非現実感をも作り出している。言葉によって生み出される事象に酩酊しながら、世界を想う。人を想う。冷静さがありながら、どこか夢うつつで、言葉の蜘蛛の巣に囚われたよう。愉しく酔えた。2023/09/05
真琴
10
★★★★☆ 9つの短編が言葉によって伝播し繋がっていく。言葉が与える力が強く呪いのようにも思えた。ネット上であれ口伝えであれ人が言葉を発するとそれは外へと放たれ漂う。「言霊」という言葉があるように言葉に込められる気持ちは恐ろしいほどに大きいと思う。日本語を母語としていて良かったと思う反面、言葉を使うのが怖くもなった。(後で修正追記します)2023/08/28
Ai
9
ゆるやかに繋がる連作。徐々に見えてくる物語の形。少しずつうすら寒くなる。リスカ少女のブログが、ネット宗教に発展していく。早く読み終えてしまいたいけど、このままずっと続いてほしいとも思える。不思議な小説だった。2024/01/27