内容説明
ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサト。だが麻酔から覚めると、見知らぬ他人の手が移植されていた。
著者等紹介
朝比奈秋[アサヒナアキ]
1981年京都府生まれ。2021年、「塩の道」で第七回林芙美子文学賞を受賞。22年、同作を収録した『私の盲端』でデビュー。23年、『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。現役の医師でもある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
263
朝比奈 秋、2作目です。広義の反戦小説、戦場では不条理なことが多いとは思いますが・・・ 黒人の手や足の裏が白いことを最近知りました。異色人種でも移植すると同化するのでしょうか❓ https://www.kawade.co.jp/news/sp/2023/07/722-2.html2023/07/10
fwhd8325
138
私には少し難しく、物語を追いかけてもなかなか近づくことができないまま終わってしまったようです。いろいろなものが詰め込まれていて、ものすごい小説なんだと思いました。2024/03/20
ちょろこ
132
重ね合わせが巧い一冊。他人同士の手と腕を繋ぐ。想像もしたことのないテーマに震えがきたことは否めない。繋がる他人の肉体におぞましさを感じつつも移植、結合を国境と重ね合わせるその巧さから目が離せなかった。白人の手を移植された日本人のアサトの戸惑い。異人種だからか、それが愛する人の手との結合なら受け入れられるのか、さまざまな感情と複雑さで心を突いてくる。と同時に日本という島国、国境をもたない民族を絶えず鏡に映し眺めさせられているようで居心地の悪ささえも感じた。異国の"今"に思いを巡らせずにいられないほどの傑作。2024/09/06
シナモン
127
誤診のうえ他人の手を移植されるなんて…焼かれた自分の手を見るなんて…なんて切ない話…と思ったらそんなんじゃおさまらない物語だった。移植された他人の手を自分のものにしていくまでの生々しい描写、その奥には国民性や民族性まで絡んでいるとは。そしてこの先の移植医療が民族的な自我の喪失にまで影響するとは。そんな深く考えたこともなかった。知らなかった世界に心のざわめきが止まらず。凄い一冊でした。2023/06/28
アキ
125
「ハンブルグで今一番有名な整形外科医はヤパァナだよ。ミヤワキといってね、・・・ハンブルグで指や腕が千切れたら、たいがいはそのヤァパナが繋ぐんだ。」「しかし、不思議でね。日本では手の移植が行われたことがないんだ。」誤診で切断された左腕にハンガリーで他人の腕を移植されたアサトの強烈な違和感。クリミアがウクライナから分離され新たな橋でロシアと繋がるように国境を接するヨーロッパの国々と違い、海で囲まれた日本では異質なものとの共生に拒否感が生まれるのか。日本で移植が行われないのは本能的にそれを知っているからなのか。2023/07/02
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