出版社内容情報
視覚障がい者を声で補助する「副音声」制度で繋がる男女。ただ、同じ視界を共有するだけのふたりが育む、もっとも純粋な恋愛小説!
内容説明
光を失った「彼女」と、未来が見えない「僕」。厚生労働省が、視覚障がい者の補助を目的として立ち上げようとしている「副音声」制度のモニターでつながったふたり。東京と函館で、ただ同じ視界を共有するだけのふたりが心を通わせていく愛の物語。函館港イルミナシオン映画祭第23回シナリオ大賞。
著者等紹介
大林利江子[オオバヤシリエコ]
愛知県出身。広告コピーライター、CMプランナーを経て、シナリオセンターで脚本の基礎を学ぶ。第2回「TBS連ドラ・シナリオ大賞」グランプリ受賞を機に、脚本家デビュー。脚本担当作品多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
158
桜色の美しい表紙にそぐわない硬質のタイトルが気になって。視覚障害者をサポートするシステムの実証実験。サービスを依頼した女性と、バイトとしてあくまでも感情の入らない「副音声」に徹する青年。読み進めるほどに明らかになるのは、2人の抱える深い絶望。が、図らずも同じ景色で繋がるうちに、徐々に生まれる連帯感、共感、そして…こんなドラマや映画を観たら胸キュン必至だわ、と思えちゃうね。心の中に優しさが満ちていく物語。2022/06/16
おしゃべりメガネ
122
読友さんからオススメいただいた作品でしたが、本当に素晴らしい内容です。故郷の北海道は函館を離れ、東京で暮らし司法試験を何度も落ち、ラストチャンスを迎えながらも引きこもり同然な生活をしている「陽介」はふとしたキッカケから視力障がいのある方のサポートとして'副音声'に係わるコトに。函館で暮らす目の見えない彼女「望海(のぞみ)」を最初は無機質ながらにサポートしていた彼が彼女の'目'をとおして、これまでの自分を見つめ直し、少しずつながら変わろうとしていきます。本作を読むと函館のステキな街並みが十分に伝わりますね。2024/11/17
昼寝ねこ
119
読メの皆様の書評で興味を持った小説が予想以上に良かった。タイトルの副音声とは視覚障がい者を音声で補助するシステム。設定が面白いし文章も読みやすい。推理ドラマのような展開に思わず引き込まれた。作者が脚本家なだけあって映画やドラマのように『絵』が見えてくるのが良い。登場人物と一緒に美しい函館の景色を存分に楽しんだ。そして満開の桜のトンネルの先で初めて出会う二人のラストシーンに感動した。いろいろな伏線が回収しきれていないようなので続編があればぜひ読んでみたい。2025/05/01
そら
83
夢追うことに疲れ、惰性で生きる山里陽介は、視覚障害者をリモート副音声でサポートする実証実験に関わることとなる。どこの誰ともわからない人の目となり、見える風景を無感情で伝える仕事はやがて彼の心を動かしていく。第一章は"彼"から見た景色を、第二章では陽介がサポートしていた"彼女"からの景色をストーリーとし、2人の気持ちと行動の変化を描く。プロジェクトを進める厚生労働省係長の朝比奈美和は、無感情を条件としていた2人の変化を鋭く見張り、成功を果たそうとする。この切ないストーリーのラストを知って欲しい。2022/07/05
mike
79
光を失い未来に絶望している彼女。司法試験に失敗し引きこもり生活を送る彼。ふたりは副音声制度というマッチング式障害者支援プロジェクトを通して知り合った。ひとりは依頼者として。ひとりは副音声として。彼等の心と同様感じられるのはモノクロの世界だけ。しかし、離れた場所から同じ空間を共有するうちいつしか心が通い合っていき、明日へ明日へと自分の世界が開かれていく。そしてじわじわと色味を増して行き美しい情景を浮かび上がらせる。ラスト、八重桜が咲き誇る濃いピンクのトンネルがとても印象的であった。2022/12/17
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