出版社内容情報
眠れ、わが魂よ。永遠の自由のなかで、眠れ―。2020年冬、惜しまれつつこの世を去った天才作家、渾身の私小説!初の単行本化。
内容説明
眠れ、わが魂よ。永遠なる自由のなかで、眠れ―。生と死を見据えながら、波瀾万丈の人生を歩み、2020年12月、惜しまれつつこの世を去った天才作家、渾身の三作!初の単行本化。
著者等紹介
なかにし礼[ナカニシレイ]
1938年、中国黒龍江省(旧満州)牡丹江市生まれ。立教大学仏文科卒業。在学中よりシャンソンの訳詩を手がけ、その後、作詩家として活躍。約四〇〇〇曲の作品を世に送り出し、日本レコード大賞、日本作詩大賞ほか多くの音楽賞を受賞する。その後作家活動を開始し、2000年『長崎ぶらぶら節』で第一二二回直木賞を受賞。2012年と2015年に判明した二度のがんを克服し、旺盛な創作活動を続けたが、2020年12月、心筋梗塞のため逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
150
なかにし礼。短編3話。どれも想像が膨らみまるでドラマのようだった。氏の作詞した歌はどれも情景が浮び、これも?あれも?好きな歌が沢山ある。長編小説ではその圧倒的な体験を基に、人間の業を何度も読ませて貰った。歌や小説が身近にあって、もういないんだとは未だに実感できない方の一人だ。2022/01/14
ちゃとら
37
【図書館本】図書館で見つけた本。出だしに「・・・来月入院する時は,その前に、遺書を書いておいて下さらないかしら。」なかにし礼さんの私小説の様なお話。心筋梗塞の発作で脈拍が異常に上がり、逆に血圧が急低下する。便意をもよおすなど、こうなるのかとリアルさにゾッとする。戦後の貧しさからシャンソンの訳詩を経て、歌謡曲の作詞家として一時代を築いた人。出てくる歌詞は殆どが曲も甦る。昭和にどっぷり浸る一冊だった。2025/03/09
いちろく
24
私小説なのか……。臨場感というよりも、その場その場を切り取った様な、現場の様子のそのまま描いた印象をうける短編集。人の欲が生きる活力にも繋がっている事を示すような内容の数々であり、生々しさも感じる昭和の雰囲気。昭和から平成にかけて数々の歌を残した作詞家でもある著者。調べてみたら世代が違う私でも知っている歌が多くて驚いた。2022/03/29
detu
16
図書館新刊棚より。丁度一周忌の発刊。『遺言歌』『奥様の冒険』『ベル・エポック』の三作収。私小説ではないけど、モチーフはなかにしさん自身のようだ。ベルエポックが一番 好きかな。奥様の、はコミカルで面白い。波乱に満ちた人生だったようだ。2022/01/21
よし
3
心筋梗塞で入院した頃の話。主人は作者本人そのものみたい。シャンソンの訳詞から歌謡曲の作詞家として身を立てる顛末の葛藤、その後の兄の借金にのたうちまわる15年。心の闇を見る思いだった。「 人間は夢を見なくなるとどんどん視界が狭くなる。普通の大人の目はみんなそうだ。足下の現実ばかり見ようとするからだ。夢見る人の目はいつも遠いところを見ている。ちょっと愚かしくも見えるけれど、愚かさとは若さのことでもあるのだ。」2022/01/13