出版社内容情報
暴力団会長の一人娘を護衛することになった、唯一の趣味が暴力の女。お嬢さんの秘密を知り――。拳の咆哮轟くシスターハードボイルド
内容説明
暴力団会長の一人娘の護衛を任された新道依子。拳の咆哮轟くシスター・バイオレンスアクション!
1 ~ 1件/全1件
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
361
王谷昌は初読。アマゾンで購入したのだが、届いて表紙を見た途端(少なくても出版社は)エンターテインメント小説に位置付けられていることがわかった。事前には、もう少し純文学よりのものを想像していたのだが。主人公の依子は北海道の奥深くで、伊賀のカバ丸のごとく祖父に徹底的に鍛えられた喧嘩の達人である。ただし、超人的な力を持つわけではなく、そのあたりはリアルの限界を越えることはない。相方は深窓の令嬢(とはいってもヤクザの会長の一人娘)と、作家の方も開き直ったようなエンターテインメント追求の姿勢を見せる。⇒2025/01/05
こーた
249
文藝の特集で読む。ヤクザと暴力。殴る。嬲る。痛い。その痛みが読むと痛快にかわる。何か怖そうだなあ、と慄いて読まずにいたのが勿体ないくらいだ。恋でもなければ、友情ともちがう。うまいことばがあてはまらない。でもシスターフッドってそういうものなのかもしれない。まだ名前のない関係性を描く。それを表現するのに小説という手法は最適だ。闘う主人公は『ミレニアム』のリスベットを彷彿させ恰好いい。おまけに飛びっきりの騙される快感までついてくる。ミステリとしても極上。彼女たちの人生、もっともっとながい長篇でも読んでみたい。2021/03/10
青乃108号
203
過剰な暴力性を秘めて生きてきた「ババヤガの女」。ババヤガ=鬼婆。女はひょんな事でヤクザに拾われ組長の一人娘の通学や習い事通いの運転手兼、ボディーガードを仰せつかる。最初は険悪だった娘との関係性も徐々に良くなってきた頃。組内で信じられない事が起こりババヤガは娘を連れて逃げる。当然追われ、逃亡生活を続ける2人。そして物語はクライマックスを迎え、ババヤガは逃亡生活で封印して来た暴力性を一気に解放させ暴れまくる!ババヤガと娘の運命は。ラストシーンは映画「真夜中のカーボーイ」のそれを想起させ、切なさが胸に迫る。2024/02/02
パトラッシュ
194
暴力アクション小説は数あれど、女性主人公なのは初めて。しかもキャラ全員が狂気と衝動に身を委ねており、冷静沈着に行動する者は皆無という振り切れぶり。「なぜ」と思えてしまう暴走にも一切の説明や描写はなく、その場の感情の連鎖が無意味な死を量産していくのだから。男たちが繰り返す血まみれの世界にあって、ヒロイン依子と尚子が少しずつ心をつなぎ合わせていく過程が純愛のように美しい。途中で挟まれる逃亡男女のエピソードに重大な仕掛けがあり、肉体がぶつかる喧嘩の果てに2人のシスターフッドへと結実するラストは本当に美しかった。2023/07/15
ひさか
111
文藝2020年秋季号掲載のものを2020年10月河出書房新社から刊行。魅力的な登場人物たちと良くできた世界観と卓越したストーリー構成の傑作。ぶっ飛ぶほどのインパクトがあり、どんでん返し的な展開も用意されていて、ハッピーエンドではないものの読後感は爽快。堪能しました。本年度ベスト級の作品です。2021/06/29