内容説明
私を阻むものは、私自身にほかならない。ラグビー、筋トレ、恋とセックス―ふたりの女を行き来するいびつなキャンパスライフ。28歳の鬼才が放つ、新時代の虚無。第163回芥川賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
743
主人公の陽介は孤独なラガーマン。小説は一貫して、彼の一人称視点から眺められ、思惟され、語られる。ラグビーは本来はチーム・プレイだが、彼にあっては自分自身の身体と精神力の鍛錬にもっぱら関心が払われている。したがって、ゲームの描写もまた、対峙するのは自分と相手である。母校(高校)のコーチとしてもチームプレイよりも、まずは自己鍛錬に主眼が置かれていた。すなわち、彼の中にあってはすべてがいわば自己完結する世界であり、対象となる人間(膝や佐々木、あるいは麻衣子や灯)、そして世界もまたそれぞれで完結しているべき⇒2020/08/25
starbro
544
第163回芥川龍之介賞受賞作・候補作第一弾(1/5)、遠野 遙、文藝賞受賞作『改良』に続いて2作目です。本作は、性欲の果て青春恋愛譚の秀作でした。慶応大学法学部で元高校ラグビー部、将来公務員、精力強ならモテるでしょうね(笑) http://web.kawade.co.jp/bungei/3688/ 【読メエロ部】 2020/07/21
鉄之助
463
主人公は、筋肉バカか?! と途中何度も思った。賢そうだけど何か、ズレてる。肉体礼賛のため、ひたすら肉を食い、セックスにいそしむ。「裸で腕立て伏せをすると、性器が都度(つど)床に触れて面白い。でも、衛生面を考えれば下着を穿いた方がいい。」 笑っちゃった。しかし、順風満帆と思えた彼の人生は急転直下、「破局」する。堅牢そうに見えた人生も、すぐそこには危うさが潜んでいる。「ゾンビ」や「臭さ」…いろんなキーワードが隠喩になっていそうで、文体の軽さや読みやすさの割には、一筋縄ではいかない作家のような気がした。2020/11/25
抹茶モナカ
319
硬質な文体で、女性との出会いから、破局までを描く小説。微妙に伏線が張られていて、最後に警官に取り囲まれるラストが引き立つ。芥川賞受賞作なので、とりあえず読んだ。恋人の灯とはセックスばかりしていた印象だが、あんなに長い時間セックスするものなのか、よくわからない。単行本では活字が大きく読みやすい。親友の仇名が膝で、お笑い芸人になろうとしているのが、微妙なスパイスになっている。好きな種類の作品。2020/08/25
ショースケ
313
感想を書くのが難しい。読みやすいんだけど、伝わってこない。途中笑ってしまう部分もあったが、主人公陽介の意図がわからない。論理的なのだけれども、結局女に踊らされているのか… 最後は自分で道を踏み外した、それが破局なのか。2021/02/08