出版社内容情報
江戸前期に諸国の怪談を集めて編まれ、「百物語」の嚆矢ともなった怪奇談の金字塔初めて全編通して現代語訳。圧巻の一冊。
目次
駿河の国の板垣三郎、変化の物に命を取られた事
座頭、旅で化物と遭った事
河内の国闇峠で、道珍、天狗に鼻を弾かれた事
松浦伊予の家に化物が棲む事
木屋の助五郎の母、夢に死人を食った事
狐、山伏に仇をなす事
蓮台野二つ塚の化物の事
後妻うちの事 付ケタリ法華経の功力
京東洞院片輪車の事
下野の国で修行者が亡霊と遭った事〔ほか〕
著者等紹介
志村有弘[シムラクニヒロ]
怪奇・伝承文学研究者。1941年、北海道生まれ。相模女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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rosetta
23
全部が怪談という訳ではなく、因縁や説教、中にはユーモラスな物もある。東北から九州、更には唐土の話まで。死んだ先妻が後妻に嫉妬して祟る話、怪異に肝試しに行く話、狸や蛇が人に災いをなす話などが目立つ。ホンの短い話ばかりだが、ここからイマジネーションを広げて創作の原案になることも多かったんだろうなとシミジミ。古文の雰囲気を残す現代語訳が味わい深い。2020/08/07
テツ
19
1677年に刊行された諸国百物語の現代語訳版。江戸時代に流行した百物語物の先駆けとなる一冊だけあり、全国各地を舞台とした怪しい話の数々はその後の類似書籍にも採用されていることが多く、この手の本が初めての方でも何となく覚えがある内容も多いだろう。いわゆる輪入道と呼ばれる妖怪の元ネタであろう『九 京東洞院かた輪車の事』が一番好きだな。ジメジメと祟るのではなく、シンプルに身も蓋もなく暴力的に怖い怪異って素晴らしい。2020/12/03
彼岸花
17
真夏に予定していましたが、ようやく読みました。あの猛暑では、化け物も、おそらく退散していたに違いありません。初の現代語版、確かに百話。蛇と幽霊話が多く、寒々とした思いでした。世の理不尽さや不条理が形となって出現し、恐怖やスリルを味わいました。生と死の境界線がすぐ目の前にあり、異界に迷い込んだ感覚でした。化け物は、人間の邪悪な心を映し出します。信仰により救われるのも、江戸時代の人々の信心深さでしょうか。怪談の他、教訓めいた話や、民話を彷彿とさせる内容もあり、物語としての奥深さを感じました。2020/09/27
アカツキ
15
諸国の人々が見聞きし、かつ確かな証拠があるとした不思議話を百話集めたという「諸国百物語」全5巻を現代語訳したもの。幽霊、蛇、化け物、不憫な話、凶悪な話、おかしな話など様々。おどろおどろしい表現があっても淡々とした語り口なので読みやすい。そのまま話を受け取っても面白いが、実際のところこんな感じだったのではと想像を巡らせても楽しい。双六に執着して幽霊として出てくる話が好き。私も気をつけないと本に未練を残して化けて出てしまうかもしれない。2025/05/11
qoop
7
数多い百物語ものの嚆矢として知られる本書。バラエティに富んだ内容で楽しめたが、落語〈兵庫船/鮫講釈〉の原話のひとつが収録されているとは知らなかった。巻の五ノ三(四ノ八も)だが、落語が原話を捻った工夫の程が知れて面白いが、五ノ三もまた原々話を捻ったものなのだろう。こうした人身御供の物語はどういった形で系譜が辿れるのだろうか。さらに遡って怪談などを読んでみたい。2020/10/27