出版社内容情報
ドローンに魅惑された私、まとわりつく犬、鉄で覆われる彼女…最愛の人や確かな記憶を失い、見知らぬ場所に来た人々を描く全8編。
内容説明
愛しかったはずの誰かや確かな記憶を失い、見知らぬ場所にやって来た彼女たちの物語。文学と奇想の垣根を軽やかに超える8編。
著者等紹介
藤野可織[フジノカオリ]
1980年京都市生まれ。同志社大学大学院美学および芸術学専攻博士課程前期修了。2006年「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞、2013年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
❁かな❁
169
久々の藤野可織さんの作品!藤野さんの作品を読むのは4作目。今作も藤野ワールド全開‼︎不思議で不気味でちょっとグロい時もあるのに何だか可愛い♡8編の短編集。いつも着眼点や発想がすごいと思う!藤野さんの可愛い感じで穏やかなお人柄からこのお話が浮かぶのが面白い!お気に入りは「ドレス」「テキサス、オクラホマ」「マイ・ハート・イズ・ユアーズ」「私はさみしかった」。「息子」は切なくて怖かった。「ドレス」は実際似たようなことはカップルの間でありそうだなぁ♪テキサス〜」は本当に藤野さんならでは笑。好き嫌い分かれる作品。2018/10/05
ケンイチミズバ
125
わからなくても惹かれるのが芸術なのか。デフォルメされた泣く女はむしろわかりやすい。ミロやポロックはわかろうとするより戸惑いの方が大きい。冒頭の塩対応な女性の行動は理解が及ばない。彼が死んでも平然としてる。気にするのは元彼になってしまった彼のパーカーの変なデザイン。彼はドローンに敵と認識される危険を冒してまで会いに来たのに彼女に愛は通用しない。過度の断舎利で白一色の痛々しい家に断舎利できない皮膚病の犬がいた。新しいトイプーが出現し、その犬はいなかったかのように書き換えられた記憶の世界がぞわっする芸術だった。2017/11/20
めしいらず
85
気になる事象に拘泥するあまり、彼らが少しずつ"普通"と呼ばれるカテゴリからはみ出してゆく過程が語られる。「テキサス、オクラホマ」「愛犬」「私はさみしかった」が好み。中でも「愛犬」が見事だった。あの「爪と目」同様、子どもの濃やかな心象描写の巧みさとリアリティは、著者の得意とするところだろう。子どもの頭の中は現実と想像の世界の線引きが茫洋としていて、脳内で好き勝手に関係性を再構築しては現実と思い込んでみたりする。そしてその中から頑なに出ようとしないのだ。うーん、居心地悪さが素敵。著者の奇想の跳躍力に刮目せよ。2018/03/23
抹茶モナカ
60
独特な感性で描かれる奇妙というか、何処かおぞましいテイストの短編集。3人称だと思ったら、1人称だったり文体もルール違反してるし。孤絶した主人公、歪んだ世界。こんな作品を生み出す作家さんだから、孤絶する感覚を日々味わっているんだろうか、と思った。『愛犬』という話は、あまり突飛でもなく、読みやすくて気に入った。この作家さんの作品は触れるのが初めてだけど、他の作品はどうなのだろう。気になった。2018/02/17
野のこ
49
なんてことないように書かれてるけど、異次元のような世界観でした。自分も主人公も相手もみんな分かち合えない、 すれ違いのような。でも一旦意識しだすと途端に違う風景が見えてくる。当たり前のことが平然と覆される驚き、わたしも深く考えたら変な所へ連れていかれそうでした。最後にぞくっとくるのがだんだんと癖になった。生肉のパーカーの話は ずっと頭のなかにレディガガがいました。2018/02/19