出版社内容情報
蚕を飼う盲目の男に魅入られた女の、時を超えた記憶を巡る物語が幕を明ける。 「救い」と「犠牲」を現代に問う傑作長篇!
内容説明
誰か“罪”を犯したのか?盲目の調律師に魅入られた新聞記者の由良。二人の記憶は時空を超え、閉ざされた島の秘密に触れる―壮大なスケールで「救い」と「犠牲」を現代に問う待望の長篇。
著者等紹介
谷崎由依[タニザキユイ]
1978年生まれ。小説家。翻訳家。京都大学大学院文学研究科修士課程修了。2007年「舞い落ちる村」で文學界新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
75
どこか幻想的で謎めいた話。よくわからない部分もあるにはあるが、この作品を取り巻く空気は好きだ。とても拘りを感じる所も。取材をきっかけに蚕に惹き寄せられていく新聞記者の由良、盲目の調律師の徳田との出逢い、ふたりが繰り返し見る同じような夢、徳田が飼ってる蚕、と何かを暗示するかのような第一章。二章はガラリと変わって、養蚕が盛んだったころの小さな村の話。村を潤す“お蚕さま”のための習わし。三章でまた現代に戻るも、事態は複雑に変化していて…。謎めいたまま、な気がするけれど、それはそれでアリ。他の作品も読んでみたい。2020/03/23
いたろう
63
新聞記者の由良は、上司と不倫をしながら、バーで出会った盲目の徳田に惹かれる。舟で島に近づく夢を見る由良、島にいて舟が来るのを待つ夢を見る徳田。蚕の取材をして以来、蚕のことが気になっている由良、自宅で蚕を飼っている徳田――。そして話は、昭和初期、京都の北、蚕飼いの村へ。時空を超えて、蚕で繋がる二つの世界。もしかすると、人間が蚕を飼っているのではなく、蚕が人間の夢を見ているのではないか。この世のすべては蚕が見ている夢なのかもしれない。オルターエゴ、別の世界にある魂の片割れは、蚕が吐いた糸で繋がっているのかも。2018/01/11
momi
44
私にはとても読みづらい文章…。独特な世界観があるが…わかりづらく、はいりこめなかった。苦戦の末途中挫折。ごめんなさい。2017/07/10
ミーコ
40
初読みの作家さん。タイトルと帯に惹かれて、図書館から借りて来ましたが・・・。感想が難しいです。純文学的な内容で理解出来ないまま 読了しました。上司の何処に惹かれて 由良は不倫をしてたのかも分からないし 何が伝えたかったのかも・・・。私には、この本の良さが分かりませんでした。2018/07/05
竹園和明
38
大きなテーマを掲げているのだが、やや観念的で訴えたい事が薄い膜で覆われている感じ。己の存在意義とか人間愛といったものをかつての花形産業・養蚕に絡めて表現しているが、繭に覆われた蚕の如く顕在化出来ていない気がした。ただ、唐突な印象すらある養蚕時代の描写、そこから現代に飛び由良と徳田の関係性に及ぶ流れは、現代社会に及ぼしている何か良からぬ物を比喩しているような気がしないでもない。この著者はとにかく語彙が豊富で言葉を自在に操るが、抽象的な全体像が文章の切れをボカしてしまっているようで勿体ない気がした。 2017/10/04