出版社内容情報
絶望の淵で、人を救い出してくれるもの……それは「言葉」。気鋭の批評家が選ぶ珠玉の言葉をあなたへ送る11通の手紙(エッセイ)
【著者紹介】
1968年新潟県生まれ。慶応大学仏文科卒業。批評家。「三田文学」編集長。「越知保夫とその時代」で三田文学新人賞評論部門受賞。著書に『井筒俊彦』『魂にふれる』『池田晶子 不滅の哲学』他。
内容説明
傷ついたひと、悲しみのふちにあるひとこそ光を旅っている―気鋭の思想家があなたに送る11通の手紙。
目次
1(涙のうちに種まく者は、喜びのうちに刈り取る;限りない幸福;かき集められた悲しみ)
2(暗やみの中で一人枕をぬらす夜;嘆きの声に寄り添うもの;消えない光;君が真理なんだ)
3(見えない涙;魂の花;読むと書く)
4(天来の使者)
著者等紹介
若松英輔[ワカマツエイスケ]
1968年生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。批評家、思想家。「越知保夫とその時代」で第14回三田文学新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mijas
61
題名通り美しい言葉で埋め尽くされた若松さんの手紙。最後は「メリークリスマス」という言葉で結ばれる。「クリスマスは、親切と、許しと、恵みと、喜びのときであり、日頃、近くに感じない人とのあいだにも、見えないつながりがあることを思い出す。」若松さんが紡ぐ言葉は人を愛しむ優しさに溢れ、心にそっと寄り添う。眼から涙が溢れるほどに、かき集められた悲しみ。悲しみは理解されることではなく、温められることを待っていると言う。若松さんの情(こころ)の言葉に思わず涙してしまうが、それはまた誰かを守るものなのだと教えてくれる。2015/12/25
ちゃちゃ
57
容易に癒えない悲しみを抱えている人への筆者渾身のメッセージ。手紙という形式を用いて、御自身が最愛の奥様を亡くされた経験をも踏まえつつ、優しく深く語りかける。悲しみとは人間がこの世で感じるもっとも高貴な営みの一つであり、苛酷な日々を生きていることこそが貴く、光を放つのだと。その光は言葉(文学)や芸術となり、時空を超えて魂の深部で他者と響き合う。「君は君、ぼくはぼくになるために生まれてきた。それなのに人は、いつも何者かになろうとする。」それがいかに愚かな行いであるか。私はこのコトバに出会えて光りをいただいた。2017/01/03
Take@磨穿鉄靴
44
死生学を勉強する一環として読む。その目的からするとデーケン氏の本を何冊か読んだ後では得られる、もしくは響く要素があまり無かった。構成が手紙という形式のため短く読みやすいがこの構成はそれ以外に読み手に恩恵はあるのだろうか。ただこの本が今の私に響かなかった悲しみが癒えてきたからなのかもしれない。少なくとも私は今悲しみに浸ってはいない。この本を必要としている人はいるかもしれないけどそれは今の私ではなさそう。かと言って悲しみに沈む人にこの本を薦める神経もない。難しい。★★☆☆☆2022/01/30
どぶねずみ
39
現代での悲しみとは、嘆かわしいとか惨めという意味で使われる言葉。だが、詩歌では亡くなった人を悼む挽歌(悲歌)に始まり、耐えがたい悲しみのあまりに発した呻きだという。亡くなった愛する人は、姿形なく会話ができなくても、いつでも自分と一番近い場所で、自分を見守ってくれるという考え方が古く万葉の時代からあったのだと。そして、クリスマスを例に、精霊についても述べているため、クリスマス前に読めてよかった。色々な悲しみを暖かく包み込んで受け止めるコトバ、それを駆使して綴られた手紙。とても読んで優しい気持ちになった。2017/12/06
とよぽん
30
若松英輔さんを初めて知った。何と強い人なのだ。そして、何と優しい人なのだ。この年になって、初めて考えさせられたことがいくつもあった。「悲しみ」や人の存在、魂に触れる「言葉」をこれほど深く掘り下げて書いてくれた人は、稀有だ。衝撃的な1冊だった。2018/01/14