目次
第1部 虫愛づる男、熱帯に吠える(フィリピン―「ルソンカラスアゲハ」発見にまつわるお話;パプアニューギニア―黒魔術と友情の島;メキシコ/キューバ―シティのシエスタ、ハバナのハリケーン)
第2部 虫屋稼業(ゴールデンイヤーズ;思い出すままに;別離と新生)
著者等紹介
川村俊一[カワムラシュンイチ]
1960年、東京生まれ。成蹊大学文学部卒(文化人類学専攻)。昆虫採集を一番の遊びとして育つ。そのまま大人になり「昆虫標本商・川村俊一」を営み、現在に至る。中学時代を過ごした香港で毎日熱帯の蝶を採り、20代からスリランカ、インド、フィリピン、メキシコ、キューバ、パプアニューギニア、ヨーロッパ各国など、世界中を駆け巡って珍蝶を追い、研究を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
343
「来たか蝶さん待ってたホイ」(帯・著者本人のコピーではないかも知れない)という軽さ(軽妙というよりはむしろ軽薄に近いか)と「万国数奇譚」といったタイトルの仰々しさとが混在する。文章表現もまた多分にその傾向がある。まあ、これも著者の個性として認めよう。全体は2部構成だが、1冊の本にするためにやや無理やりに第2部をくっつけた感がある。読み物としては、やはり第1部の海外に蝶を渉猟するくだりがハイライトだ。フィリピン、パプアニューギニア、メキシコ/キューバ篇は、普通でないところに行くだけに冒険心に溢れている。2019/11/25
おーすが
12
昆虫標本商の川村俊一さんが、チョウを探してフィリピンやポリネシア、メキシコを訪れる。安全とは言えない場所へ単身乗り込んでゆくバイタリティ、どうにかなってしまう強運(インドでは逮捕されたが)、モテそうな外見ではなさそうなのに美女が寄ってくるモテ力(失礼…だけど表紙を見る限り太っちょおじさん)、まさに昆虫版インディジョーンズという感じで大変面白く読んだ。ラバウルの呪い返しの話なんかもしんみりして良い。後半の昆虫標本界の有名人の逸話も白眉。数奇譚でもあり標本商烈伝でもある。2023/02/02
イノ
11
蝶の昆虫標本を商いに世界を駆け回る男のエッセイ。2部構成だがいきなりキューバでこの業界だとみな知ってる○○さんとか~~蝶とかで置いていかれる。 読み進めて著者自身や出会う人達のエピソードが豊富で面白くなってきた。万国数奇譚の意味がようやく分かる。 2部ではようやく業界と著者の話。先人達が切り開いた話や虫取り少年がそのまま大人になりその世界に足を踏み出す過程と標本商のせいで離婚したり家族について後悔したり感謝したり。父の献身が素晴らしい。 また一つ世界を知れた。良書。 一つは標本が欲しくなった。2019/11/03
honey
3
蝶に取りつかれて昆虫商になり、世界中飛び回り蝶を追い続ける著者の半生記。 面白かった。前半は行った先での面白エピソード。最終章は、離婚・母の病気などほろっとさせる。 2012/05/10
タカラ~ム
3
“昆虫標本商”という職業があることをはじめて知った。確かに、昆虫の標本を熱心に蒐集するコレクターがいるのだから、そこに商品を提供するビジネスがあっても不思議ではない。それにしても、いくら著者自身が熱狂的ともいえる蝶マニアだとしても、ここまで過酷な思いをしてまで採集に出かけるのは並大抵ではないと思う。いろいろな苦難にあっているはずなのに本書の中ではあっさりとしか触れていないのもすごい(インドで半年も拘束されたこともさらっと1行で終わってるし)。2012/04/13