内容説明
詩に惹かれる女子中学生・ミナコと女性教師・坂口が交わした、不器用な愛と友情。―孤独な心を未来へ渡す、希望の長篇。
著者等紹介
小池昌代[コイケマサヨ]
1959年、東京都生まれ。詩人として『永遠に来ないバス』など多くの詩集を発表。2001年、『屋上への誘惑』で第一七回講談社エッセイ賞を受賞。07年、「タタド」で第三三回川端康成文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いくら
29
国語教師の坂口、その教え子で中1のミナコとニシムラ。3人を結びつけるのは詩。それぞれの心情が丁寧に描かれて、感情移入がしやすい。不安定な思春期の頃の感情を思い出し苦しくなる。また、そこに詩的な情景描写が折り込まれてくるところがたまりません。作者の言葉を借りるならば、「甘やかな」痛みを伴う読書体験ができました。なんでも胸キュンで括ってはいけないね。2016/05/21
まど
22
詩に惹かれる女子中学生・ミナコと女性教師・坂口が交わした、不器用な愛と友情の物語。詩のこと以外はたくさんのことが書かれていないのに、一人一人のことが深くわかる。筆者の力なのか、『詩』の力なのか。不思議な読後感。一般生徒から隔離されている「芽吹き」が気になった。学校の中であそこまで秘密の場所があるのは不気味。2010/08/30
つーさま
17
冴えない女子中学生ミナコ、男子中学生のニシムラ、国語教師坂口。本書は、詩を愛する彼らの交流を描いている。散文と散文、会話と会話の間から詩的な表現が植物のように顔を出し、甘い香りをさせながら全身を舐めまわす。しかし、恍惚とした感覚が去った後、皮膚という皮膚には傷がある。そこから痛みがやってくる。詩にも小説にも棘があることをすっかり忘れていた。詩を読むこと、小説を読むことは、常に甘美に浸りながら、痛みに耐えることなのかもしれない。もちろんその逆も言える。彼らのやりとりはそんな大切な感覚を教えてくれる。2013/04/30
黒猫
16
途中で放棄しようと思ったがなんとか読み終える。葡萄棚の下の詩の朗読会。私も参加してみたかった。中学時代に。萩原朔太郎の詩、読んでみようと思った。2017/05/04
arkibito
14
詩の気高さに魅了された3つの不器用なタマシイの物語。詩という澄んだ存在、無味乾燥とした中学校という舞台、目に見えない土壌汚染や見つからない特別学級の存在あるいは無音で回り続ける赤色灯が暗示する漠然とした不安感、そして冬のキビキビとした寒さ。それらが見事にシンクロし作品全体を、ひんやりとした透明感、残酷なまでに研ぎ澄まされた空気感で包み込むことに成功している。装丁も素晴らしくジャケ買いしました。秀作。2010/11/02