内容説明
父の思い出を巡る旅路の果てに…名作「死の棘」の作者である父とそこに描かれた今は亡き家族に捧げるレクイエム―「私小説」の影の記憶。
目次
第1章 父
第2章 妹
第3章 叔父 叔母
第4章 小岩から
第5章 小高へ
第6章 琉球旅行
第7章 骨
著者等紹介
島尾伸三[シマオシンゾウ]
1948年神戸生まれ、奄美大島育ち。写真家。両親は作家、島尾敏雄、島尾ミホ。1974年東京造形大学卒。1978年写真家・潮田登久子と結婚。夫妻共著による中国風俗のルポ多数。娘は漫画家・タレントのしまおまほ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二戸・カルピンチョ
23
こういう狡い文章は、好きとか嫌いとか単純に判断できない。「おとうさんのことはよく知らない」らしいが、それは社会的評価についてで、著者が見てきたおとうさんのことは温度と湿度と共に記憶されている。おかしな夫婦とおかしな子供達、不幸な子供達。型にはまらない事はとても大変そうで、そこに自由の喜びを感じられる人なんてそういないはずなんだ。2022/07/01
かりんとー
6
他の方も書いている通り、文章が優しく子どものようである分、心の傷の深さがまざまざと見える。2017/09/01
fuchsia
6
島尾伸三の文章には常に不穏な暴力が潜んでおりそれは彼の本質が虐げられ、怨みにみちた子供のままで成長を止めているからなのだろう。彼にとって妻子は天使の如き存在なのだろうが、それを持ってしても両親によってもたらされた傷、なかんづく妹の死は癒されることが無い。なので、島尾敏雄はやっぱり好きになれません。2010/09/13
Gaooo
5
「死の棘」で気になってしょうがなかった子供たち。兄と妹。兄の書く家族はやはり緊張感を伴うものであり、母の強権をうかがわせるものだった。語られる記憶の中に語れない事の凄まじさがにじむ2019/09/27
硯浦由咲
4
この方の文章を読むのは初めてだから他の著作との違いは分からないけど、こういう文章でしか書けなかったのかなぁ、と感じた。妹のマヤさんの死については(トシオとミホについても)、娘さんのしまおまほさんの本でも読んでいたけど、しんどかった。マヤさんをミホさんとの生活から折角助け出したのにまた戻らされてしまい、そしてその生活の中死んでしまったところは、まほさんの本でも暗い影を落としていたから。最後の一文は泣けた。2013/08/15