内容説明
見知らぬ人たちのシルエットが奏でるゆるやかな官能の響き。第42回文藝賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
56
窓を通じて見たい他人の全ては、自分が見たくなくて知られたくないものという着眼点が面白いと思いました。姉の娼婦のような全ては嫌うのに、窓の向こうの全ては見たいと思う矛盾があります。綺麗ではない生々しい部分を認めたいのか認めたくないのかの境界が曖昧ですが、おそらく自分の中にもあることを確信したいのでしょう。憧れと憧れたくない気持ちの表れが窓の向こうを眺めることに通じているのかもしれません。人間の行動の不可思議さを描いた作品ですね。文章が綺麗なのでサラリとしている印象です。2014/08/31
やま
50
都会の孤独とそこで生きる人たちの営みを描いた物語です。「窓の灯」と「ムラサキさんのパリ」の2編からなっています。 【窓の灯】 大学を中退したまりもが、下宿の一階でやっている喫茶店で働きだす。そこの女主人とまりもの係わりを描いた物語です。 【ムラサキさんのパリ】 主人公の働く会社の清掃婦との係わりを描いた物語です。青山七恵さんの本は、2021.12.26~2022.01.01まで音読で「ひとり日和」を読んで以来です2025/02/06
青蓮
41
青山七恵さん、2作目。さらっと読めるけれど、私の心にはあまり響かなかった。作風が合わないのかも。2015/07/15
あつひめ
40
文藝賞受賞作。このストーリーと似たようなのをテレビドラマで見た気がするのは気のせいかしら?青山さんの描く影の薄い主人公。主人公の肉体は目立たなくても魂が色濃いような気がする。いつも誰かの目を気にしている。そして自分も人の事を気にしている。覗く行為には興味本位と寂しさがあるのかもしれない。灯りの灯る部屋は自分以外の人の呼吸が聞こえる。大きな波も小さな波もない物語の中で人の息遣いを表現している作品だと思う。読むのは暑い季節には不向きなような気もする。ねっとりとした暑さが息苦しくさせる。物語の季節は真夏だけど。2011/06/12
なっく
26
青山七恵のデビュー作。窓の中がはっきり見えないからこそ、人間模様が浮かび上がる。夜ごと男を連れ込むお姉さんも、自棄になっているのか、何を考えているのか分からない。すべてがぼんやり、うっすらする中で、まりもも女になっていく。こうやって女という魔物は生まれていくのか。2018/02/19