内容説明
黎明の明治に生を享け21世紀をも詠み続ける歌人・斎藤史が世に問う幻の小説。ゲストエッセイとして俵万智・水原紫苑が執筆。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
prefabjubilo
1
歌人である齋藤史さんの小説が、二編、「過ぎて行く歌」と「太鼓」が収められています。表題作は、1948年信濃毎日新聞社創業75周年懸賞小説第一席入選の「過ぎて行く歌」を大幅に加筆したものです。 短編の「太鼓」は、村の盆踊りを背景に、未亡人の心の動きを見事に描写している短編です。こちらだけでも、十分に読む価値があります。 山口泉さんの解説、俵万智さん・水原紫苑さんのゲストエッセイも掲載されています。2013/10/26
thugu
0
俵万智のエッセイで紹介されていたため読んだ。以下、印象に残った場面。〈不意に、岡は手をあげた。両手を、がっしりと阿佐子の肩の上に置いた。引寄せるでもない、押しのけるでもないーただ、置いたのだ。ー彼女の白いブラウスの威厳めいた肩の張りはたちまち押しつぶされ、その中の肉体の清らかな丸みは、大きい彼の掌の中に、完全に包み込まれた。〉〈「いや」と止める拍子に、手が触れた。そのまま握った。女の手は、こんな時引っ込む動きをするはずであった。〉〈〉2023/12/04