内容説明
ヨーロッパの華・カールスバードの良き市民、食肉加工を家業にする知的職人、戦乱のヨーロッパで幾度も国籍を変えられたボヘミア人、鉄のパン・ヨーロッパ主義者、日本での食肉加工のパイオニア―カール・レイモンに従い、激動の世界を経巡った明治の女・勝田コウの数奇な人生を描く、感動の人間ドラマ。
目次
1 勝田コウの旅立ち
2 カールスバード
3 カール(レイモン)の青春
4 ボヘミア
5 幸せな日々
6 パン・ヨーロッパ
7 再び日本へ
8 無国籍者
9 津軽海峡の北極星
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山猫
13
著者はミツコ以外にどんな人物について著しているのか、知りたくなって。やはりドイツにゆかりの人物についてなんですね。レイモン氏については函館で散々聞かされたのですが、奥様との歴史についてはあまり触れられていなかったので、これを読んでよかったと思いました。2002/07/15
けいちか
3
大正時代に函館の旅館の娘と客であったボヘミアのドイツ人が恋仲となり、駆け落ちしてカールスバードまで旅をした。正式に結婚もし、婚家の人々にもかわいがられていたのだが、夫がヨーロッパに失望し、アメリカでひと財産築いてから函館に戻ったら、実家が火事に遭っていて、以前のままではなかった。時代も第二次世界大戦が近づいていて、結局はどこも理想の土地ではなかったのだろう。しかし、最後は函館に骨をうずめた二人。理想に燃えていた若い頃に実行に移すところが凄い。2014/02/01
noémi
2
函館の勝田旅館の棟梁娘である勝田コウとボヘミア人であるカール・ヴァイドル・レイモンが駆け落ちをした!長い船旅を終えて突いたところは、ヨーロッパ中の著名人がくる、豪奢な温泉街カールスバード。そこでハムやソーセージを作っていたレイモンはベルサイユ条約の不平等さに立腹して、ほぼリヒャルト・クーデンホーフと同じ考えである「パン・ヨーロッパ」を提唱し、民族自決という考えは次なる戦争を引き起こすと遊説して各地をまわったのだが、結局失敗した。一念発起して、今度は妻の故郷である函館へ。まさに波乱万丈の人生。2011/03/12
はそやm
1
函館旅行で偶然知り軽い気持ちで読んでみました。函館良かったなぁと思い出すつもりで。苦労しながらも美味しい加工肉を作り上げ幸せな一生を送られたご夫婦のお話かと思ったら。切ないです。まさかこんなに切ないとは。人間とは、国家とは、男女とは、幸せとは、主義主張とはなんなんだろう?函館で単純に美味しい美味しいと喜んでいた自分を思い出し複雑な気分になりました。2015/09/02