内容説明
「ねえ、バルコニーに鳥が来てるわ」それが僕の聞いた『北川美花』の最後の言葉だった。そのあと彼女の口はいろいろな音を出したが、それはもう言葉ではなかった。『北川美花』の温かな乳房に耳を押しつけ彼女の心臓が停まる瞬間を聞いた。トラウマもない、悪意もない、動機もない。今も世界は溶け続けている。史上最悪の連続大量殺人の日々。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐伯
17
とてもたんたんとして読みやすかったです。 でも少しもうちょっと内容的に工夫してほしかったな‥ 2015/04/07
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
13
安田祐二は不動産管理会社の経営企画室に勤めるエリート会社員。しかし彼にはある秘密があって・・。人の命を何だと思っているのだろうか。彼が行っている行為に対して決して感情移入はできないけれど、かといって不思議と憎みきることも出来ない。ある女性にある人物の身元調査を依頼したことは身の破滅としか思えませんでしたが、彼はどこかで破滅する日を待っていたのだろうか。中盤ダレた感じはありましたが、後半からは少し持ち直したかな。★★★2011/08/13
ろけっと
11
安田祐二。容姿端麗で頭脳明晰、社内での肩書は経営企画室室長。 自由になる金も時間も女も揃っている彼にも抑えきれない欲求がある。細い首をもった人を見ると絞め殺したくなること。学生時代に砲丸投げで国体までいった腕力で喉の骨を砕く。殺した後だけタバコを吸い、グリーンピースに寄付をする。モーツァルトを聴きながら、南極の氷を入れたスコッチを飲む。瀕死の野良犬を拾って看病する。そして、また人を殺す。 彼の行動に善意と悪意の区別はあるのだろうか?彼は半年後のことは考えない。ただ、デジタルに生きているだけなのだ。2010/07/28
ちょん
9
こんなに読後感悪いのは久しぶり。安田は、どうなりたかったのか。どうしてもらいたかったのか。何をしたかったのか。最後の最後まで安田の気持ちはわからなかった。家族やフルートに対する気持ちの優しさは、罪滅ぼしではない本物を感じたんだけど。。2012/10/25
巨峰
8
大石圭の原点といえる作品の一つ。こんなリアルな殺人嗜好者の話はこれまでなかった。