内容説明
碧い惑星はあるだろうか、ボディを離れたぼくらの〈帰還〉の涯てに。消滅から再生へ向かうビルディングの混沌のなか、〈離脱〉へひた走る少年とスピリットの行方を描く、書下し長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
90
色々な意味で切なかったです。消滅から再生へと向かう混沌の中、まだ見ぬ碧い惑星の存在を信じ続けるアナナスとイーイー。現実とテレヴィジョンの幻想の中でアナナスの記憶が自由な方へ解放されていくようでした。アナナスの記憶の扉が開かれたとき、イーイーのつづってきた手紙はどうなるのか気になって仕方ありませんでした。何もかも忘れてしまったアナナス。その側にいるイーイーが辛かったです。ひたすら悲しみが漂っているように感じました。何かが落ちたような空洞ができたようです。2016/02/23
マッピー
19
文体に慣れたせいか、上巻よりはスムーズに読むことができた。バッドエンドのディストピア小説であることもわかった。そのうえで、読むのしんど!慣れたとはいえ、好きじゃないんです、こういう勿体つけた書き方。みんな、アナナスに説明をしない。説明を求めると「今は言えない」とか言って、結局最後まで言わない。終焉が迫っているのが分かっている時に、それってどうなの?最終的には閉じた環というよりも、下降する螺旋を想起しました。だって、彼らの世界って、生産がなくて消費からの廃棄ばかりじゃない。明るい未来を思い描きようがない。2024/11/05
mimm
4
文庫版を何度も読んでいたので、一応再読?何となーく意味は摑みかけてきたけど、つまるところはまだよく分からない…(ハッピーかバッドか、そんな終わりの心理すら)でも切ないシーンが多くて、途中何度も泣きそうになりました。特に別れのシーンは、何度読んでももうもう。アーティのラストが意外にびっくりです。怖っ。2012/07/10
ML-0021234-Eheh
4
下巻ではアナナスとイーイーの距離が縮まる、というより深まる感じがした。切ない感覚に胸が締め付けられ、漠然と何かを考えさせられる。私的な解釈だけど、これは《新世界》と機能的な部分の他にも繋がるものがあるように感じた。解釈は読んだ人それぞれだと思う。そこもまた魅力の一部になっていると思う。2009/07/01
NayutA
3
上巻と比べ破滅の色が濃くなっていく。登場人物たち(人なのかどうかも怪しい)のはっきりとした立場や関係性は明らかにされないものの、異常事態の中で見えてくる彼等の関係が切ない。環境汚染に対する風刺もあるか。最後に残ったのは誰なのか、何なのか。どこまでがテレヴィジョンの世界なのか、そもそも幻影ではない世界は存在するのか。いくつもの謎が謎のまま幕は下りてしまうが、終盤、断絶が酷くなるアナナスの視点で物語を追っていくうちに、哀しみと混乱が自分にも降りてきて、涙が出そうになった。2011/07/07




