内容説明
ほの青い林野の奥へ二匹の美しい猫が走り去った。文芸賞作家待望のメルヘン第2作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
73
夢の言葉でつづられた少し怖い童話のようでした。食べ物を拒み続けていた月彦が紅玉色の柘榴を口にするところが綺麗です。世界観や雰囲気が曖昧だけれど美しくて透明感を感じます。月彦の夢の中の記憶が黒蜜糖と銀色の名前を刻み込み、自分の意志で洋杯に手を出すことで白い野ばらの庭がぼんやりと残るのが印象的でした。夜の少年たちの奇跡のような物語です。2015/08/21
ちはや@灯れ松明の火
41
野ばらの垣をくゞり抜け、紺青の夜の帳に迷い込んだ。其れはいつか見た夢。散りゆく一重の白い花びらは、幽かな蜜の香を含む風に運ばれ天へと舞いあがり、雪の如く降りそゝぐ。夜の底へと積もるように。ふと目醒めれば其れも夢。閉ざされた庭、夜合樹の綿毛、芍薬の蕾、足踏ミシンの音、するり闇をすり抜ける猫。夜の静寂を白く染めて。何処までが夢なのか、十重二十重、幾重にも夢が折り重なる。銀色と黒蜜糖、夜と昼、柘榴の紅玉と雪の中の金魚、庭と学校、夢と現の間を蔽うように降りしきる白い花びら。其れもまた、果てなく織り成される夢の中。2010/09/13
凪織
17
煌めくは紅玉色の柘榴。夢かと思ったらそれも夢で。幾度も重なる目覚め。どこかで古いミシンが音をたてている。目の前を走るのは二匹の猫。劇は始めを繰り返し、いつの間にか終わり、少年は垣根を超える。そしてまた彼は白い野ばらに囲まれた庭に戻ってくる。最初はいったいどういう世界なのだろうと探り探り、中盤でいつまでも覚めない夢と繰り返される場面に背中がすっと寒くなり、終わる頃には幻想的な白い野ばらの香りに包まれ、眠りに落ちるときのようなふわりとした感覚を覚えた。月明り冴える不思議な物語。2016/11/11
ゆゆゆ
13
夢かまぼろしのようにあやふやなおはなし。「銀色と黒蜜糖」シリーズのなかでも一番謎な作品だと思いますが、不思議な雰囲気が好きです。「夏至祭」では無邪気なキャラだった黒蜜糖の妖しげな一面をみられて嬉しい。2013/04/04
紫陽花
10
この本の帯には「少年アリス」「野ばら」はメルヘンで「夜啼く鳥は夢を見た」はファンタジーと書いてあったのでメルヘンとファンタジーの違いを調べてみると、メルヘンはおとぎ話のことでファンタジーは空想ってことらしい。この本もおとぎ話らしい不思議な話でした。ただいまいち結末がよくわからず…おとぎ話だから?絵本版とかあればいいのにな〜まゆみさんの美しい絵の詰まった絵本とか読みたいな〜と思いつつ読みました。2014/04/26
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