出版社内容情報
《内容》 近年，医療および保健をとりまく環境は著しく変化しています。医療提供体制の整備が進むにつれ，医療の質の向上とともに医療の安全性への要求が高まり，医療事故防止のためのリスク・マネージメントの設定，患者との信頼関係をより強固なものとするための診療情報の開示，遺伝子治療など医療技術の進歩に伴う倫理規範の制定などがその一例でしょう。それに伴い医療事故やインフォームド・コンセント取得義務違反に基づく損害賠償に関する判例理論の発展もみられます。
本書は，これらの動向をふまえ，旧著『現代医事法学』（初版1993，改訂第2版1997）を改題し，新しい法令，判例，学説をていねいに解説し，より実務的な面に配慮して執筆されています。現時点における実務者向けの医事法学の標準的概説書に仕上がっており，学生のテキストにも最適です。
《目次》
1）医事法の基礎的理解
法の概念／法の領域／法の存在形式／医事法学／生命倫理と医事法
2）医療の当事者および医療施設
＊患者
患者（人）／人の始期および終期／親子関係／親族／判断能力の不十分な人の保護／患者の権利の尊重
＊医療関係者
医療関係者概説／医師／歯科医師／薬剤師／保健師・助産師・看護師／歯科衛生士／歯科技工士／診療放射線技師／臨床検査技師・衛生検査技師／理学療法士・作業療法士／視能訓練士／臨床工学技士／義肢装具士／救急救命士／あん摩マッサージ指圧師，はり師，きゅう師／柔道整復師
＊医療施設
沿革など／総則／病院，診療所などの開設／病院，診療所などの管理／病院，診療所などの構造，設備，人員／公的監督／医療計画／公的医療機関／医療法人／広告／救急医療施設
3）医療法律関係
＊診療契約
診療契約の多様性／診療契約の当事者／事務管理の場合／診療契約の成立と終了／診療契約の性質／診療契約の内容／契約によらない診療などの開始
＊診療報酬支払の法律関係
社会保険医療／社会保険診療報酬支払基金
＊医師の説明と患者の同意
説明・同意問題の沿革とその類型／有効な同意を得るための説明／療養方法などの指導としての説明／転医勧告としての説明
＊末期医療
末期医療の問題点／末期医療と自己決定権／安楽死の問題／DNRの問題／重症新生児の医療／末期であることの告知
＊死の定義と判定
死に対する基本的考え方／脳死問題の経緯／脳死判定にかかわる問題
＊臓器移植
移植の種類と問題点／死体からの臓器摘出／生体からの臓器摘出／臓器提供契約／臓器受容者側の問題
＊人工妊娠中絶・不妊手術
人工妊娠中絶／不妊手術／不妊手術と性転換手術
＊医療事故とその状況
医療事故の意義／医療事故の原因と状況／類型別過失態様／医療事故の法律上の責任
＊医療事故による損害賠償責任
債務不履行と不法行為／医療上の過失とその判定基準／因果関係／損害の算定
＊医療事故と病院の責任
医療事故の責任主体／他人を使用することから生ずる責任／建物・設備などの管理責任／共同不法行為と組織医療・チーム医療／病院の自己責任／病院の責任と個人の責任
＊医療事故による損害賠償をめぐるいくつかの問題
和解・示談／医師賠償責任保険／カルテ等の閲覧請求について／損害賠償の請求と消滅時効／手術誓約書について
＊医療事故による刑事責任と行政処分
刑事責任と民事責任／業務上必要な注意／因果関係／チーム医療と信頼の原則／医療事故の具体的刑事事件／医療事故の行政上の責任
4）保健医療行政
＊保健医療行政組織
いわゆる衛生行政小史／保健医療行政組織／地方公共団体の保健医療行政組織／保健所／市町村保健センター
＊感染症対策
総説／感染症の予防・医療・措置など／予防接種／結核予防／検疫感染症予防／狂犬病予防／結核・感染症サーベイランス事業
＊薬事保健
沿革／薬事法／医療品の副作用被害の救済／医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法／毒物および劇物取締法／麻薬および向精神薬取締法／覚せい剤取締法／大麻取締法／あへん法／採血および供血あっせん業取締法
＊精神保健
精神保健対策のあゆみ／精神保健・精神障害者福祉法／入院患者の人権保護／精神障害者の社会復帰の促進
＊食品保健
総説／食品公害事件／食品衛生法／有害物質を含有する家庭用品の規制
＊母子保健
沿革／母子保健法
＊老人保健
沿革／老人保健法
＊学校保健
学校保健の定義／学校保健法
＊労働保健
労働保健の概要／衛生管理体制／労働保健の推進
＊環境・公害保健
総説／環境基本法／公害健康被害の補償
＊死体解剖・献体など
死体解剖と検視／死体解剖保存法／医学および歯学の教育のための献体に関する法律／死産の届出に関する規程／墓地・埋葬など
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