出版社内容情報
《内容》 おもな改訂点
1)解析結果を数量化(ジギタル化)し,理解しやすい運針術理論に近づけた。この数量化された知識はコンピュータ(ロボット)手術にも必要な資料で,本書に述べる運針術理論はロボット外科にも不可欠である。
2)外科医の運針は,縫合針が持つ固有の彎曲を無視した軌道(逸脱運針)が多い。本改訂版では逸脱運針の持針器操縦術も示した。
3)縫合針の彎曲は変らないが,もっとも庇護されるべき柔軟な被運針組織が縫合針の無理難題に耐えている。そこで,外科医の実際の運針軌道を基に,その運針に使用された縫合針の彎曲(運用半径)を算出した。
4)本改訂版ではブタではあるが,心,肝と脾の耐性強度(破壊応力)を提示,漿膜(心は心外膜)の補強力も定量化し,少なくとも,相手組織の耐性強度を考慮した運針や結紮を可能にした。
《目次》
■運針の基礎とその理論
運針の理想-その三大要素/運針の理論・学問化は必要か-“To be, or not to be : that is a problem”/組織損傷最小化の基本-蟻の穴から堤の崩れ/運針の基本型-片面型運針と両面型運針/運針の現実-理想とのギャップ/運針の実行-それは1つの錐回転と2つの臼回転/運針の三大制約-運針の足かせ/教科書が説く運針法の矛盾-現代外科学の「うっかりミス」/運針の組み立ては3段構えで-「足かせ」からの脱出/ブタ心筋の耐性強度からみた運針-負荷可能な実際の力(数値)/鑷子の効用-「隠し業」による「内助の功」/逸脱運針の持針器操縦術-持針器の意外な針運び/逸脱運針の代償-針の無法は傍若無人/筆者が勧める運針法-長槍の繰り出し戦法
■運針の技術とその勘どころ
“縫合針の切れ”は使いよう/針穴は最小に/縫合は裁縫にあらず/逸脱の運針法/縫合術のア・ラ・カルト/糸捌きのコツ
■結紮の基礎技術とその勘どころ
知識工学(人工知能)と結紮/上手な結紮とは/結紮の目的/結紮後の糸処理/結紮法/結紮に緩みを生じさせない“コツ”/結紮部の組織を“ちぎらない”コツ/速やかに結べる“コツ”/そのほか
■止血の基礎技術とその勘どころ
止血のみに追われるな/出血血管を鑑別せよ/止血法の種類/結紮止血法の“コツ”/縫合による止血の“コツ”/電気凝固による止血の“コツ”
■剪刀(ハサミ)の使い方とその勘どころ
手術の巧拙は剪刀の使い方で決まる
■cut-downの基礎技術とその勘どころ
血管探索法の“コツ”/挿管法と不慮の抜管防止法
■そのほか
切開と開腹の“コツ”/手術者の気働き/手術助手の気配り/計算式