内容説明
近年、バイオマス活用や地球温暖化への対処としての炭素吸収、大地震・大津波に強い海岸林、豪雨に対する斜面林のあり方など、森林土壌や樹木の性能や活用に注目が集まっている。その土壌に直接結びつき、森林の生産そのものを支えている樹木の「根」は、一般には利用される機会がなく、観察や研究方法も困難とされてきた。本書では、群落学的立場から根量および吸収構造の解析を中心に林分の各部分の現存量・生産量・物質貯蔵などの詳細な調査測定をおこない、根系の分布・形態を明らかにし、森林の生産と根系の機構および機能について生態学的な考察を加えている。日本全国の林分を対象とし、実際に膨大な数の樹木の根を掘り出し、高い精度でバイオマスを測定する…決して容易ではない作業の結晶としてまとめられたのが本書である。
目次
研究の目的
研究の背景
研究方法と現存量測定法
苗畑試験における幼齢林の地下部の構造と根量分布の表し方
林分調査における地下部の構造の解析
根密度
林木の成長と葉量・根量
根系の水分吸収
林木の各部分の窒素・リン酸・カリウム・カルシウムの現存量
森林の生産量の循環
根系の形態と分布
根系の支持作用
根系の物質貯蔵
森林の根量と機能―まとめにかえて
著者等紹介
苅住〓[カリズミノボル]
1927年、松山生まれ。1948年、愛媛農林専門学校(現愛媛大学)農学部卒。農林省林業試験場植生研究室に勤務。森林植生と樹木の根系の生態学的研究に従事する。1955年、農学博士。初代樹木医会会長(現在は名誉顧問)、林学会賞受賞。“木の根の博士”として世界の第一人者であり、森林生態・造園・造林学の権威(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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