内容説明
サウンドスケープは、カナダの現代作曲家マリー・シェーファーにより提唱された。本書の中で著者は、シェーファーの思想と活動を紹介し、さらに音を通して環境を認識し、新たな地平から風景を見直すことを提案する。
目次
序章 音の風景をめぐって
第1章 マリー・シェーファーと20世紀音楽の地平
第2章 音の風景を聴く
第3章 サウンドスケープ思想に基づくデザイン活動
終章 音の風景を生きる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
モダニズム建築の機能主義は、人と物流を重視したゆえに工業社会の発展を背景にして都市問題と環境問題を引き起こした。1960年代に音楽の側から騒音問題を取り上げ、音と心身のバランスによるサウンドスケープを提唱したM・シェーファーを紹介する著者は、視覚と脳中心だった建築と都市におけるランドスケープに、聴覚から身体感覚に及ぶサウンドスケープを対置させる。入門書である本書第3章には、大分県竹田市の瀧廉太郎記念館に、作曲家が幼時過ごしたこの地の音の風景を資料から音響設計して再現する著者の試みの記録が収録されている。2025/08/05
misui
6
「サウンドスケープ」の概念を提唱したマリー・シェーファーの思想と手法を紹介し、それがいかに展開されるかを述べる。伝統的な西洋音楽からは締め出されてきた音に耳を傾けて人間と環境とのつながりを再考する……20世紀のエコロジー思想から派生したこの考え方は全感覚的に世界を捉え直そうとする運動のひとつであって、視覚に偏りがちな認識を大きく拡張する。サウンドスケープ・デザインともなれば単に音環境の掘り出しに留まらず、音と人間の関係性そのものへと及び、デザイン概念をも拡張する。地味だがきめ細やかな考え方だ。2015/05/10
河村祐介
3
非常に興味深いというか。視覚と聴覚とのバランス感というところで言うと、コロナ禍のディスプレイを通したある種のサウンドスケープ論みたいなのも夢想できるなというのも。あとはやっぱりサウンドシステムやクラブミュージックもまた。2021/06/22
左手爆弾
2
カナダのマリー・シェーファーによって提唱された「サウンドスケープ」の理論と実践手法を紹介。分量的に短く、この分野をとりあえず知るのにはよいと感じた。サウンドスケープは音楽から始まった運動だが、音(聴覚)にとらわれず、五感や歴史なども活用した新しいと同時に、ルネサンス的な総合芸術運動でもある。シェーファーの活動のきっかけは「騒音問題」であるため、環境問題などとも直接に繋がるし、西洋の伝統にある「天体の音楽」とも無関係ではない。実践編も含めて、大量の図表を本文の内容と結びつけてくれればもっと読みやすかった。2018/01/06
かれーらいす
1
実践あるのみで不正解や失敗がないサインドスケープをこの感想を記す前に完成させました2025/08/01