感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
装飾芸術博覧会(1925)に出品したエスプリ・ヌーヴォー館は、様々なパビリオンを通ってセーヌ川を渡り、飛行機型の巨大な建築物グラン・パレの影に位置する。「住む機械」として人間中心の思想に裏打ちされたこの住宅は、幾何学的なフォルムで機能を強調し、建築意匠の規格化と標準化を目指したがゆえに物議を醸し、片隅に追いやられたと言われる。本書はアール・デコ中心の博覧会建築への異議を唱えるモダニズム建築の「新精神」の主張と共に、1922年に企画された集合住宅の構想からその1ユニットを万博に出品するまでの紆余曲折を記す。2025/06/04
Koki Miyachi
1
1925年パリ万国博覧会「レスプリ・ヌーヴォー館」の記念出版物。コンクリートによる純粋な幾何学の実現。「住むための機械」であり、美の感覚をもたらす場としての住宅。水平連続窓、軽快な壁、テラス状屋根、幾何学的比例関係による完璧な調和。装飾的要素即ち束縛からの解放。大量生産システムによる建設。パリの街を超高層ビル群と緑のに作り替える都市改造案「ヴォアザン計画」。近代建築のエッセンスが高らかに宣言されている。学生時代のトルコの旅日記や、住宅プロジェクトの解説、水平連続窓を巡るペレとの応酬なども興味深い。2013/06/21