内容説明
大名屋敷の分割から始まった東京の住宅地開発は、大正期に入り郊外に広がっていく。そして、郊外電車の発展と中産階級の増大によって、独特の郊外文化を形成していった。それは、洗足や田園調布のように田園都市をうたったもの、桜新町や城南文化村のように当初は別荘地として開発されたもの、成城や国立のように学園町の構想で造られたもの等、様々な表情を見せている。14の事例は、各々の筆者が現地踏査した成果をまとめたもので、開発当初の敷地図、当時の住宅の平面図や写真、広告、ちらし等、多くの資料を使って視覚的に見せる。
目次
東京の郊外住宅地(江戸から東京へ;山の手と下町;住いのユートピア;東京から大東京へ)
郊外住宅地の系譜(神田三崎町;音羽町の大正期における借家経営;東京の軽井沢…桜新町;蒲田の「吾等が村」―黒沢貞次郎の工場村;日暮里渡辺町消滅;大和郷住宅地の開発;堤康次郎の住宅地経営第1号―目白文化村;洗足田園都市は消えたか;田園調布誕生記;「城南田園住宅組合」住宅地について;学園都市の理想像を求めて―箱根土地の大泉・小平・国立の郊外住宅地開発;成城・玉川学園住宅地;準戦時期の住宅地開発…「健康住宅地・常盤台」のまちづくり)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
7
87年刊。戦前に形成された東京の郊外住宅地を取り上げ、それぞれの住宅地に籠められたユートピア像を探った一冊。分譲だけでなく良質な借家街も目に付くのが印象的です。元小田急沿線住民としては、成城学園と和光学園、玉川学園が一人の人物でつながっていたというのが興味深かったです。国立学園都市は堤康次郎が力を入れて開発したのに、鉄道はおろか西武バスすら全く絡まないところも面白い。本書はもう35年も前の成果になりますが、時代はバブル絶頂期、共同研究も当時の危機感の表れだったのかもしれません。2022/07/19
鵐窟庵
7
東京の住宅地を山手、城南の各地域の名だたる住宅地の形成過程を歴史的に詳解。当時は往々にして都心が過密や木造長屋で住環境が良くないため郊外に憧れの田園都市や田園住宅を建設する機運が高かった。まずは都心部の本郷西片に学者村として住宅開発が行われ、文化人の住まう住宅地が作られた。文化と郊外住宅地が一体に理想として形作られた。その後、阪急電鉄の沿線開発を範に、田園調布や洗足が開発され、後の東急沿線の各住宅地の原型になった。さらに、徐々に郊外へ発展していき、成城、大泉、国立と言った学園都市が形成されていった。2020/11/23
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