内容説明
理系×文系という対立構造のなかでは、読み解けない、面白い江戸の本の世界!読み物としての医学書・本草書を発見する。
目次
序章 医学書のなかの「文学」
第1章 それは「医学書」なのか、「読み物」なのか(愉快な書物―「読み物」としての医学書;『医者談義』談義―人文学と自然科学という対立を無化する書物;医学書に擬態する文学作品たち、さまざま;江戸のカルテ、医案の世界―『武道伝来記』にみる西鶴のねらい;江戸以前の医学の文芸―御伽草子『不老不死』;「医学者」と「読み物」の間にある幻想)
第2章 江戸期を通じて愛されたヤブ医者、竹斎(『竹斎』のモデルは誰か―曲直瀬流医学と関わって;『竹斎』作者・富山道冶の家―仮名草子のふるさと;「芸能者」としてのヤブ医者―唄われた竹斎;『竹斎』と文化圏が重なる『恨の介』―戦国期の医師について;江戸文芸の発展を映し出す、御伽の医師の「書いた物」)
結章 近世文学の新領域
著者等紹介
福田安典[フクダヤスノリ]
1962年大阪生。大阪大学文学部卒。同大学院文学研究科後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門は日本近世文学。大阪大学助手、愛媛大学教育学部教授を経て、日本女子大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はづきち
10
医学書と文学という、一見相反するものがどのように関わるのか。理数系学問を過度に推進する昨今の風潮に違和感を持ちつつ、もしこの二つが融合したらどんなに面白いだろうと思って読んでみました。私自身の無知によってなかなか読み進めるのは難しかったけれど、医学と文学は切り離せるものではなく繋がっていること、どちらの素養もあることによってより楽しめる文学があることを知りました。確かに文系理系なんて区別ができたのは最近だし、ダヴィンチのようにいろんな分野の知識を持つ人だっていたんだもんな。2024/03/07
mawaji
3
日経新聞の著者の論説を読んで手に取りました。膨大な資料と専門書の引用で医学と文学が手を携えて作り上げた世界を読み解く作業はかなりの労力を要したと思われ読む方も苦労しながらナナメ読みでなんとか読了。専門書の内容をもじって戯れたり、わざわざ漢文に戻して意味の通る内容に仕上げたりして、それを読んで楽しめるのはかなり民度が高くなければ難しいのではなかろうか。医学に限らず、物理学、数学など論理学的に物事を議論するには文学的素養が必要な側面もあるのでしょう。優れた物理学者や数学者は文学的素養に溢れた才人も多いのでは。2016/10/03