内容説明
作品論であれ、考証的研究であれ、「作品」そのものを対象とする研究が停滞するようであっては、文学研究は貧弱化するだろう。ここにとりあげる『太平記』は、南北朝期の四十年に及ぶ戦乱をともかくも描ききった、文字どおり希有の書である。しかし、四十巻という膨大な分量をもつことや、これに取り組む研究者が少ないことなどから、依然として基本的な部分での研究課題を積み残している。こうした状況を省みて、『太平記』研究になお残る課題を少しずつでも解明することをめざし、『『太平記』をとらえる』を全三巻の予定で上梓することとした。
目次
1 『太平記』における知と表現(『太平記』の引歌表現とその出典;『太平記』テクストの両義性―宣房・藤房の出処と四書受容をめぐって)
2 歴史叙術のなかの観応擾乱(下剋上への道―『太平記』に見る観応擾乱と足利権力の神話;『太平記』巻二十七「雲景未来記事」の編入過程について)
3 神田本『太平記』再考(神田本『太平記』に関する基礎的問題;神田本『太平記』本文考序説―巻二を中心に)
外国語要旨