内容説明
古今を通じての恋の代表選手が、最もいとおしい思い出を描く。あらざらんこの世のほかの思ひ出でに今一度の逢ふこともがな(百人一首)。たったこれだけの事を、こんな情愛をこめて、やさしく美しく表現した和泉式部。新しい解釈で蘇る。
目次
聞かばや同じ声やしたると
はじめて物を思ふ朝は
折過ぎてさてもこそ止め
おのがたゞ身を知る雨
出でさせ給ふはいづちぞ
殺してもなほ飽かぬかな
恨み絶えせぬ仲となりなば
人は草葉の露なれや
舟流したる海人とこそなれ
七夕に忌まるばかりの〔ほか〕
著者等紹介
岩佐美代子[イワサミヨコ]
大正15年3月東京生まれ。昭和20年3月女子学習院高等科卒業。鶴見大学名誉教授、文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒロミ
5
文庫版の和泉式部日記が欲しかったのですが、行きつけの書店にはこれしかなくて購入しました。瑞々しい現代語訳で素敵でした。情熱的で恋に生きる魔性の女流歌人、和泉式部。自分とは間逆の生き方なせいかフィクションとして楽しみました。しかし兄弟と付き合うってすごいですね…。他の現代語訳本とも読み比べしてみたいです。2014/12/01
ひろゆき
2
感動しました。恋人が亡くなったばかりなのに、そこから始まる新たな恋。現代小説なら随分と言い訳めいた前置きが長くなりそうなのに、なんの違和感もなく自然に展開する冒頭から引き込まれた。視点が動くので、日記というより、自由自在の物語。古典を読む楽しみの一つが、現代の感覚との共通点を見つけることにあるなら、まさにこの作品かと。映画的な技法の書き方で表される感覚。舞踊のような歌のやりとりで一見繰り返しのようだが、飽きさせず、結末の凱歌へと進行する。彼女のプライド!注釈も理解しやすく、ためになりました2014/01/17