内容説明
本書は、『万葉集』から『古今和歌集』を経て『新古今和歌集』に至る和歌表現の歴史を、わかりやすく、そしておもしろく叙述しようとする試みである。古今集に仕掛けられた撰者の知的挑戦を、千年の時を経て遂に解読。
目次
序章 問題の設定
第1章 和歌が確立されるまで
第2章 仮名の形成と仮名文の発達
第3章 言語の線条から仮名の線条へ
第4章 『古今和歌集』の「短歌」
第5章 和歌による叙情表現の限界―『新古今和歌集』から連歌、俳諧へ
付章 方法論―文献学的アプローチ
補章 和文に応用された複線構造による多重表現―『古今和歌集』仮名序冒頭と『土佐日記』冒頭との場合
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zunzun
3
万葉集、古今和歌集、新古今和歌集それぞれの差異と表現の進化について既存の学説にとらわれず、刷新を促す論攷がまとまった本である。とにかく著者による日本文学研究者たちへの叱咤激励、悲憤慷慨がとまらない。彼からすれば「和歌が詠(読)めてない」という。その理由としてはやはり知識的なもので、新古今和歌集をよもうとおもえば万葉集や古今和歌集を意識していなければ読解不可能なのにもかかわらず、それらを踏まえた縦の読みができていないせいで深々とした読解ができず、上辺だけの解釈に終わっていると指弾している。2025/07/17
kaizen@名古屋de朝活読書会
1
「最終講義に代えて」 という一文で、内容が推測できる。 真面目な,学術的な,でも面白いもの。 Roman Jakobson, Six lecons sur le son et le sens が問題提起かもしれない。 大野晋の「日本語の形成」を最後に持って来たあたりが、 まだこれからの課題であることを強調したいことが分かる。 著者の「日本語はなぜ変化するのか」を参照している。2012/05/03
ぜっとん
1
面白いけど、そこまで新しい考えとも思わない部分も結構あったなあ。自分に古典を教えていた教師はこの人の本や考えを知っていて、取り入れて教えていたのだと改めて知った。ながうたの部分と序文の話はまだ半信半疑なので、もう少し真面目に勉強してからまた検討し直す。2013/01/26
miyuki
0
『仮名文の構文原理』のあとに読んだので筆者の論がわかりやすかった。筆者によってとなえられた複線構造を用いて、よりコンパクトに説明しているという感じ。先行研究への批判が激しいが、先行研究とはそもそも違うフィールドで論じられているから、その分、論理で批判せねばならず、そこが極めて論理的なところが学術的水準を保っている。ただし、こういう目立った批判を避けたかるひとも多かろう。その場合は、日本の学問水準がそのレベルであるということに他ならないので、この本の責任ではない。でも、やり過ぎにおもうところもやっぱある。2018/01/10