内容説明
甥の公暁に暗殺され、二十八歳の若さで散った鎌倉幕府第三代将軍。定家を師し仰いで、家集『金槐集』を残した。資質豊かな王侯風とも万葉風ともいうべき大らかで力強い調べに特色がある。源氏三代の最期を迎えた「悲劇の人」の心を映す、知的な歌作りを明らかにする。
目次
けさ見れば山もかすみて
この寝ぬる朝明の風に
みふゆつぎ春し来ぬれば
ながめつつ思ふも悲し
山風の桜吹きまく
山桜今はの頃の
行きて見むと思ひしほどに
君ならで誰にか見せむ
あしびきの山時鳥
萩の花暮れぐれまでも〔ほか〕
著者等紹介
三木麻子[ミキアサコ]
1955年兵庫県生。大阪女子大学大学院修士課程・関西大学大学院博士後期課程修了。現在、夙川学院短期大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りっとう ゆき
3
前に太宰治の「右大臣実朝」を読んで、将軍でありながら細やかな感性を持っているその人柄に興味を覚えた。この本は実朝の歌とその背景(歴史的なところもかなり)や思いなどわかりやすく説明されててよかった。「孤独」って言葉が何度も出てきたのと、古歌をもとにした歌でありながらも自身の内面を強く込めてると知って、やはり苦悩、葛藤はたいへんなものだったのだろうな、とせつない気持ちにもなった。巻末の橋本治氏による実朝とその周辺に関してのエッセイもわかりやすかった。2021/03/13
garyou
2
歌人としての実朝については橋本治の『これで古典がよくわかる』の印象が強くてなかなか拭い去れずにいたものの、この本では歌にあることば通りに受け取る点が多く見られてとても参考になった。本歌取りは「オリジナリティがない」という人もいるけれど、そうではないということもこの解説からよくわかる。当時、家族に和歌の話ができる相手がいないというのがどういう意味を持っていたのかはわからない。いまなら家族とTV番組や映画、まんがや小説の趣味が合わないってつらいなって思うけれど。2024/04/04
Yuuki Takanokura
1
源実朝の和歌を集め,その大意を示すと共に,歌の技法(例えば,本歌とその大意など)や歌の背景を丁寧に解説した書籍。源実朝が万葉の歌人であり,工夫を凝らしながらも写実的で,「時流に染まず世間に媚びざる処」(正岡子規『歌よみに与ふる書』)が堪能できる。 ボクの好きな歌は,月並みだけれど... 「大海の磯もとどろに寄する波 割れて砕けてさけて散るかも」2012/08/30
anzuzuzuu
0
大河ドラマを見て源実朝をもっと詳しく知りたいと思っていたところ、フォロワーさんにおすすめいただいた。 金槐和歌集を読む前の予習としてうってつけな本。歌の背景や本歌取りの元となった歌、歌から読み取れる実朝の心情など豊富な解説がありがたい。 和歌や解説から、実朝の優しさと苦しさや孤独を強く感じる。また、実朝の和歌には本歌取りが多いが、元となる歌を活かしつつ新しい情景が見えてくるのがすごい技術だなと思う。情景といえば実朝の和歌には「音」を感じさせるものが多く、その表現力に脱帽する。2022/12/28
サチ
0
図書館に返却前に再読。22の「ちはやぶる伊豆の御山の玉椿八百万代も色は変はらじ」は出典が玉葉集・1359になっているけれど、続後撰集の誤りかと。2021/11/10