内容説明
新古今時代の女流のうち、後鳥羽院に見出されて才を誇った二人の女性歌人。伊勢や和泉式部などの女歌の伝統とは異なる題詠の世界に、新たな才能を開花させた歌人たち。俊成卿女は恋の情緒を定家風の巧緻優艶な風にうたい、宮内卿は、清新な自然詠や恋歌を切れのあるタッチでうたった。対立的な二人の個性を見比べたい。
目次
俊成卿女(梅の花あかね色香も;風かよふ寝覚めの袖の;恨みずや憂世を花の;橘の匂ふあたりの;大荒木の森の木の間を ほか)
宮内卿(かき暗れしなほ古里の;薄く濃き野辺の緑の;花さそふ比良の山嵐;逢坂や梢の花を;柴の戸にさすや日影の ほか)
著者等紹介
近藤香[コンドウコウ]
1970年、ハンガリー・ブタペスト生。立正大学文学部国文学科卒業、同大学院文学研究科満期退学。現在、龍谷大学仏教文化研究所所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
303
俊成卿女と宮内卿の2人で1巻になっているが、この2人の女性は1人で十分に巻を背負える実力派。新古今への入集をとっても俊成卿女が29首、宮内卿が15首と錚々たるものである。俊成卿女の歌は「伊勢物語」中の歌を踏まえたものなど本歌取りに本領を発揮するようだ。ただ私の推す歌は「風かよふ寝覚めの袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢」である。一方の宮内卿は15歳で歌壇にデビューし、20歳くらいで夭折している。まことに惜しまれる。一般には「薄く濃き野辺の緑の若草の跡まで見ゆる雪のむら消え」が代表歌とされ、「若草の宮内卿」⇒2022/08/07
新地学@児童書病発動中
89
俊成卿女と宮内卿という新古今和歌集を代表する二人の歌人の代表的な作品を収録。この組み合わせがたまらなく良い。俊成卿女は成熟した女性で彼女が詠んだ歌は、大人の女性の陰影がある。宮内卿は10代で歌壇に登場した人物で、彼女が詠んだ歌には若さが漲っている。清新で鮮やかな詩情がある。このように対照的な歌人を擁していた新古今和歌集の懐の深さに、改めて目を開かれる思いだった。俊成卿女は長く生きた人で、晩年の作品には諦観と寂しさが感じられる。「ながむれば我が身ひとつのあらぬ 世に昔に似たる春の夜の月」続きます。2017/12/08
kaizen@名古屋de朝活読書会
54
#俊成卿女 #和歌 梅の花あかぬ色香も昔にて同じ形見の春の夜の月 #返歌 梅の花梅酒梅干しのし梅と同じものみて味が香に勝つ2016/01/16
双海(ふたみ)
14
和歌の世界に遊ぶ。和歌はいい、とにかくいい。自分の年齢が上がっていくにしたがって新古今の良さがわかりはじめてきた。数か所、誤植と思われるものがあって気になる。2024/03/10
Waka
2
誤植がすごい。途中から、誤植を見つけるつもりで読んだくらい。 ・慈円の兄弟に兼家はいない。兼実のことだろう。 ・×かき暗れし ○かき暗し ・×かえる ○かへる ・泡は「あは」ではなく「あわ」 ・×置き敢えぬ ○置き敢へぬ ・×かほる(2箇所) ○かをる ・×ゆうぐれ ○ゆふぐれ ・×言ひしばかりに ○言ひしばかりを ・×薄く濃き野辺の若草 ○薄く濃き野辺の緑の若草 ・×「若草の」の歌 ○「若草に」の歌 ・「経」は「経り」という活用をしない。 ・枕草子は「秋は夕べ」と言った。「夕べは秋」とは言っていない。2019/08/11