内容説明
新古今時代を代表する歌人。九条家歌壇を確立。定家らが開拓した新風和歌の庇護者ならびに育成者として、また、後鳥羽院を補佐して『新古今集』成立に多大な貢献をした。歌は印象鮮明な叙景的傾向に富む。『新古今集』仮名序の筆者でもあり、歌は巻頭を飾った。歌集に『秋篠月清集』がある。
目次
冴ゆる夜の真木の板屋の
問へかしな影を並べて
ながめやる心の道も
昔誰かかる桜の
友と見る鳴尾に立てる
あはれなり雲に連なる
見し夢の春の別れの
古郷は浅茅が末に
夜の雨のうちも寝られぬ
空はなほ霞みもやらず〔ほか〕
著者等紹介
小山順子[コヤマジュンコ]
1976年京都府生。京都大学大学院博士課程修了、博士(文学)。現在、天理大学文学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
323
良経は、九条家の御曹司(次男であったが、兄の良通の急逝により惣領に)であり、歌道においては俊成を師とし、後鳥羽院の庇護を受け、定家や家隆等と競い、とこれ以上は望めないほどの境遇にいた。『新古今和歌集』に79首が入首したことからも明らかなように、歌の実力のほども十分どころではない活躍である。しかも、名歌揃い。では、そんな良経の代表歌を選ぶとなると、これが存外に難しい。例えば、本書の編者小山順子氏が選んだ44首と巻末エッセイの塚本邦雄が選んだ16首とは見事なまでに重ならない。2022/04/06
はるわか
11
見し夢の春の別れの悲しきは長き眠りの覚むと聞くまで/見ぬ世まで思ひ残さぬながめより昔に霞む春の曙/吉野山花のふる里跡絶えて空しき枝に春風ぞ吹く/暮れかかるむなしき空の秋を見ておぼえずたまる袖の露かな/み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春は来にけり2022/04/22
chisarunn
10
百人一首に「きりぎりす鳴くや霜夜の…」が採られている彼である。子供の自分は「きりぎりすの大臣」としか覚えていなかった。作者の名は後京極摂政前太政大臣となっていたからである。その人の名が藤原良経と知ったのは大人になってからであった。当時の印象は彼女に振られた可哀想な人(きりぎりすの歌のせい)だったが、背景を知るにつれあながち外れてもいなかったなと思う。ただし彼女に振られたわけではなく、位人臣を極めていながら政治的には印象が薄いことといい、思い通りの人生ではなかったのだろう。2022/07/20