内容説明
大長編『源氏物語』の和歌版ダイジェスト。物語のあらすじにも触れ、『源氏物語』の内容がコンパクトに一目瞭然に分かるというプレミア付き。800首近くにのぼる源氏物語の多くの和歌の中から、物語の作中人物が詠んだ歌を、各巻から一首ずつピックアップして解説。物語の進行や様々な場面に応じ、歌がどのように相手の気持ちとの駆引きによって詠み出されるか、その妙所を解いたユニークな書。特に贈答の歌に注目した。
目次
限りとて別るる道の―桐壺更衣
山がつの垣ほ荒るとも―夕顔
空蝉の羽におく露の―空蝉
見し人の煙を雲と―光源氏
世がたりに人や伝へむ藤壷中宮
ふりにける頭の雪を―光源氏
唐人の袖ふることは―藤壺中宮
憂き身世にやがて消えなば―朧月夜
袖ぬるる泥とかつは―六条御息所
神垣はしるしの杉も―六条御息所〔ほか〕
著者等紹介
高野晴代[タカノハルヨ]
1951年東京都生。日本女子大学大学院博士課程後期満期退学。現在日本女子大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
54
#和歌 唐人の袖ふることは遠けれど立ち居についけてあはれとは見き #返歌 麗人の裾ふることは遠けれどサンバ、タンゴとコーヒールンバ2016/01/10
ピロ麻呂
29
(マイベスト)袖ぬるる 泥とかつは 知りながら 下り立つ田子の みづからぞ憂き(六条御息所)泥水の中でもがき苦しむ恋路と知りつつ、恋の闇路に踏み込んでしまった自分が我ながらつらくてなりません。2017/01/23
しゅてふぁん
28
源氏物語には795首の和歌が詠まれている。54帖もの長編だしおかしくもないのかな、と思ってみたけれど、やはり珍しいことだそう。その中から1帖1首をあらすじと共に解説した源氏物語の和歌版ダイジェスト。和歌の意味を深く読み取ることができれば、源氏物語をより面白く読めるんだろうな。私には難易度が高すぎる(^^; 印象に残ったのは、26帖『常夏』での近江の君と弘徽殿の女御の珍妙な歌の遣り取り。高貴な雰囲気の和歌が並ぶ中、この二人の珍妙な贈答歌にホッとした(笑)2016/11/20
森の三時
26
物語の中に出てくる和歌だから、どれも気持ちの機微が伝わってきます。三十一文字という制約の中に無限に広がる世界。「『源氏物語』では、作中人物が高揚した恋の場面にさしかかると、呼称をすてて『男』と『女』と書かれることが多い。身分や社会的立場を示す呼称を消去するということは、一組の男女として生で向き合っていることを示している」とのこと。読者は男と女の間に起こることを垣間見ながら、自分に置き換えて感じることができるのかもしれません。源氏物語はダイジェスト版でしか読んだことがないのでいつか読破したいと思います。 2019/01/26
かふ
19
『源氏物語』が歌物語であるということを証明するような和歌の数々。各帖から一首取り出して54帖で54首を代表させて解説しているのだが、それがその帖を代表する歌でもなく、脇役の人物からの歌の中にも物語のポイントがあることが知れる良書。解説も引歌などを示して丁寧でわかりやすい。実際に返歌や贈答歌なども紹介しているので歌の数は100を超えていると思う。『源氏物語』の入門書というより和歌の世界を知ることが出来る。2023/04/24