内容説明
泰平の世、三百年をかけて文化を成熟させた江戸時代。歪み、行き詰まる現代社会が成熟するためのヒントがそこにある。社会・思想・書物・絵画―従来の近代主義的な評価にとらわれず、江戸に即して眺めることで、「江戸の本当の姿」を理解する。江戸文学研究の泰斗による講演会を収録。
目次
第1章 大勢五転―近代人の江戸観について(高まる江戸ブーム;「大勢五転」とは ほか)
第2章 雅と俗と―江戸文化理解の根本理念(前回のまとめ;江戸に対するスタンスのとり方 ほか)
第3章 江戸モデル封建制―その大いなる誤解(誤解された江戸の封建制;西洋型学問摂取の弊害 ほか)
第4章 近世的自我―思想史再考(江戸思想史再考;雅俗のバランス ほか)
第5章 和本リテラシーの回復―その必要性(出版物に関する江戸の常識;木版本と活版本 ほか)
著者等紹介
中野三敏[ナカノミツトシ]
1935年(昭和10年)福岡県生まれ。九州大学名誉教授。近世文学研究。1998年に紫綬褒章、2010年に文化功労者を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テキィ
6
江戸時代に出版された活版の本や、写本を買って、変体仮名や草書の漢字をちょっとずつ読めるようになろう♪ 雅と俗の変遷は18世紀に均衡。だから18世紀がもっとも江戸らしい。現代はこれから近代を超えて真に成熟していって欲しい☆ ここから私見。マンガやゲームという、いわゆるサブカルチャー、つまりは「俗」が今均衡しているのか、ハイカルチャーを追い越してきたかは微妙やな。ま、古いもんにあんまこだわっても、時代の流れがあるよって教えられた気分。2012/10/06
しんしん
4
江戸時代の書物を僕たちはもう読めなくなってしまっている。 外国語を読んで空間的に認識を広げるのもいいが、江戸の書物を読んで時間的に意識を広げるのもいいのではないか。2015/11/03
さんとのれ
2
講演をまとめたもののせいか、あくまでイントロダクションという感じであまり掘り下げられていない。取り上げられているテーマ、特に「雅と俗」と「封建制」に興味があるだけにちょっと物足りなかった。2014/02/08
サチ
1
論文のために。かろうじて「雅と俗」辺りが使えそうだったけれども、基本「講演」なので、参考文献として引用に使うには「薄い」感じ。2018/08/03
イカ男
1
①アメリカの小学生で、十八世紀の独立宣言を、読めない小学生はいない、日本人で、そこそこ知識人で明治の初めにできた、福沢諭吉の「学問のすすめ」を原本で読める人が何人いるか?②江戸時代にできた書物の内、活字になっているのは1%にすぎない。しかも、その1%は明治の近代主義の観点から価値があると思われたものだけが活字になっている。つまり、近代主義を批判する立場、または近代主義を乗り越えるような書物は活字化されていない。③このままだと、活字化されていない和本は廃棄されてしまう。一冊500円程度で購入できる、せめて、2012/08/19