出版社内容情報
「お迎え」体験とは、終末期の人間が、すでに亡くなった家族や知人など、
見るはずのない人間と出会い、会話する不思議な体験である。
従来、医療者はこうした事例を現場で確認しながらも、
幻覚、せん妄の一種として本格的な研究を避けてきた。
本調査は15年以上にわたって継続し、医師のみならず
人文・社会学者も加わっての横断的な研究成果としてまとめられた。
1700人以上の遺族アンケート調査による精密な分析により、
日本人の約4割が広い意味での「お迎え」体験を経験していることが分かった。
また、自らの死期を悟る、あるいは終末期の一時的な意識覚醒など、
本邦初の「死の直前に起きる現象」についての統計調査、データが初めて公開され
る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とろこ
61
昨年10月に他界した私の父。父は亡くなる数日前から、病院の病床で、毎日のように、私に、「今日、〇〇(当時既に他界していた父の弟)が見舞いに来てくれた」と言っていた。今思えば、あれも「お迎え体験」だったのかもしれない。本書は、特定の宗教や思想を勧めるものではない。終末期の患者が在宅で看取られた際、自らの死期を悟ったような発言や、何か不思議なことはなかったか?というアンケートに対する答えを纏めたものである。またその現象を、科学的に論じることにはあまり意味を見出していない。逝かれる者の気持ちにも触れられている。2020/08/03
yamatoshiuruhashi
38
終末ケア緩和、在宅での看取りを中心とする医師がまとめた臨終の前の「お迎え」の記録。亡くなる前に本人が語ったことや遺族が語ったこと。或いはアンケートに答えてくれたものから事実や著者が考えたこと。「お迎え」が何かは敢えて著者は結論を出さないが、それが本人や遺族にとって心休まるものであればそれでよいと思う。2020/04/30
ようはん
19
5年前に亡くなった祖父は亡くなる数日前、この本に書かれている「お迎え」の体験をしていた事を思い出す。祖父の場合数ヶ月前からの体力低下が急激で入院後にすぐに亡くなり死に目にあえなかった事を後悔している。この本では数多くの遺族が語る家族の最期を迎えての事例が紹介されているが、やはり人は家族の存在が大事であると再確認する。2020/05/23
Tomomi Yazaki
19
これはなんと、医師による「お迎え」体験の調査をまとめた本です。考えてみれば、死に際に最も直結する職業が医師ですから、その事例は山ほどあるでしょう。そして驚くべきことに、この研究費には国の補助も出ているとか。これを読み終え、私なりに考えました。お迎えとは、世間一般に言われる形而上的な意味合いではなく、人の本質、真理を垣間見せる道しるべなのではないでしょうか。トラは死して皮を残し、人は死して想いを残す、なのです。2020/04/19
多喜夢
13
本来のテーマとは関係ないのだが、あとがき(エピローグ)に「本というのは、たとえ1行でも『なるほど』と思えるようなところがあれば、買う価値がある」という文章があり、これがいちばん印象に残った。死の直前に一瞬元気になる状態を医学的に解説しており、そこの部分もなるほどと思った。2020/06/27