出版社内容情報
『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作家が贈る、傑作時代ミステリー。安永八(一七七九)年、十一月二十一日早朝――。神田橋本町の自宅で源内が目を覚ますと、続きの間の向こうに、男の亡骸があった。知らせを受けて駆けつけた杉田玄白の目には、脇差を手に持ち、茫然自失とする源内の姿が。何があったのかを源内に問い詰めるが、記憶がないと首を振るばかり。稀代の天才に、いったい何があったのか。殺人の容疑で牢屋敷に入れられてしまった源内は、やがて獄中死してしまうが――。身分は侍。本業は本草学者。医学、蘭学や鉱物の知識にも明るく、戯作者、発明家といったよろずの才を持つ者として、現代にも名を残す江戸の天才・平賀源内の、非業の死の謎に迫る!
内容説明
晩年に人を殺め、伝馬牢で獄死したという平賀源内。“江戸の天才”と謳われた男に何が!?『このミス』大賞作家が「歴史の謎」に挑んだ渾身作!
著者等紹介
乾緑郎[イヌイロクロウ]
1971年、東京都生まれ。『完全なる首長竜の日』にて第9回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。『忍び外伝』で第2回朝日時代小説大賞も受賞し、新人賞二冠を達成。『忍び秘伝(文庫化タイトル:塞の巫女)』にて、第15回大藪春彦賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えみ
24
己は何者になりたいのか…。多芸多才と持て囃されてはきたものの、何も成してはいない。何者にもなれず、朽ちていく我が身に不安と恐怖を募らせていく日々。本草学者であり、商売をしてもそれなりに成功。蘭学にも明るく、戯作なども書きながら、一方で鉱山開発にも精通した才能溢れる男。平賀源内。友である杉田玄白が「不発の天才」と称したように、才能を持て余した彼は、ある日殺人犯になった。一体彼の身に何があったのか。多岐にわたる才能を中途半端に振りまいた平賀源内という奇人は、歴史線上から消えたあとで何者かになれたのだろうか。2020/04/13
えも
22
平賀源内の獄死を巡るミステリー。源内さんは魅力的なので、よく小説の題材にされますね▼今回は源内さんの中にある焦りや寂しさのようなものを捉えて構成されてて、場面の転換や各エピソードも楽しめましたが、なんというか、作者がさらさらと書いたような感じで、もっと深みが欲しかった気分です。2020/03/26
遊々亭おさる
22
多芸多才で稀代のアイデアマン。何者にも縛られず、自由を愛した天才の悩みは、何事も人並み以上の才覚を発揮してしまうが故の器用貧乏な己れの人生。そんな失意を抱える平賀源内は殺人を犯した罪で投獄され、獄中死をしてしまう。悲運の天才の人生の末路に隠された陰謀とは…。義経伝説などに見られる死んだ筈の英雄は実は生き延びていて、名を変え新たな活躍をしていた!系のお話し。日本の医学の近代化に貢献した杉田玄白など、田沼時代の才人たちの若かりし青春の日々の物語でもあり。願望に満ちていてもいいじゃないか。せめて物語の中だけは。2020/03/09
くみこ
20
土用の丑の日の生みの親でもある多才な発明家、平賀源内に関しては残念な知識しかありません。こうした身分で、こんな事をしてたのかと、新鮮な思いで読みました。規格外の発想と才能を持った源内にとって、武家社会はさぞ窮屈だったのではと想像出来ます。ミステリ部分の真実も説得力がありましたが、小道具としての竹とんぼが、とても印象に残ります。(竹とんぼの発案者も源内だとか)最後の場面の美しいこと。面白おかしくて切ない、愛すべき人物として描かれた平賀源内の物語でした。2023/05/04
moimoi
18
「エレキテルの源内では、あまりに哀しすぎる」。大半の人は、平賀源内と言ったらエレキテルを連想すると思う。私が平賀源内を知ったのはズッコケ3人組だった。その作者の那須氏も源内が人斬りをしたのはやむにやまれず、といった話にしていた(はず)。恐らく那須氏も乾氏も彼の多才さ、器用貧乏が故の哀愁などに惹かれたのだと思う。代名詞になったエレキテルを操作しながら、源内が涙を流すシーンは同情した。多才だが思っているほど周囲には評価されず、顕示欲はあるくせに気が小さい。史実はどうあれ、人間味のある源内がより好きになった。2022/01/04