出版社内容情報
トランプ関税、米中対立、レアアース、炭素国境調整措置(CBAM)、そして経済安全保障──。
近年の経済ニュースで頻出するこれらのキーワードの背景には、「自由貿易」と「保護主義(貿易)」の対立構造が存在します。とくに第一次トランプ政権以降、自由貿易の旗手とされてきたアメリカが保護主義へと急速に舵を切り、第二次政権ではWTOへの拠出金停止や、全世界に対する一方的な関税措置など、従来の国際秩序を揺るがす政策を推進しています。その結果、「自由貿易=善」という従来の前提は大きく崩れつつあり、世界は深い混乱の只中にあります。いまや、国家安全保障や気候変動、デジタル取引の分野までもが「貿易」の問題に組み込まれつつあり、従来の枠組みでは捉えきれない局面を迎えています。こうした状況を理解するためには、自由貿易と保護貿易という基本軸を押さえることが不可欠です。この軸を持つことで、国際政治や経済の構造が立体的に捉えられるようになり、日本への影響や、読者自身が働く業界、日常生活に及ぶインパクトまで、よりわかりやすく理解できるようになります。
本書は、複雑化する貿易の現実を、「自由貿易 vs 保護主義」というシンプルな対立軸から再構成し経済ニュースや国際政治の“行間”を読み解くための、わかりやすいビジネス教養書をめざします。
【目次】
Part1 貿易赤字はアメリカ経済の弱点か? 強みか?
貿易大国アメリカの貿易赤字は本当に“悪”なのか?
001 とにかく「赤字」が嫌いな実業家ドナルド・トランプ
002 なぜアメリカは“貿易赤字”が増え続けているのだろうか
003 アメリカの貿易赤字の現状と国別の内訳を見てみよう
004 日本の対米輸出・輸入の内訳を見てみよう
005 それでも企業への影響は不可避 トヨタが発表した関税の影響
006 関税の影響を織り込んだ日本企業の業績見通し
Column 自由貿易の始祖「アダム・スミス」の経済観
Part2 アメリカの関税政策に世界は大混乱!?
世界経済を混乱に陥れた「トランプ関税」
007 世界に衝撃を与えた「トランプ関税」とは?
008 トランプ政権が世界各国に課した相互関税の税率を見てみよう
009 狙い撃ちされた中国 報復関税の応酬の経緯
010 トランプ関税は誰が得をして、誰が損するのか?
011 アメリカがめざすのは自由貿易? それとも保護主義?
012 「 国内政治」の道具になる貿易政策
013 アメリカの世論と企業は「トランプ関税」にどう反応したか?
014 トランプ関税でアメリカに“製造業”は戻るのだろうか?
015 アメリカの関税措置に関する日米間の合意の内容は?
Column 保護貿易を主張した「フリードリヒ・リスト」
Part3 貿易政策は2つに大別される
よくわかる 自由貿易vs保護主義の基本
016 自由貿易を支える論理「比較優位」とは何か?
017 自由貿易のメリット・デメリット
018 保護貿易のメリット・デメリット
019 自由貿易? 保護貿易? 国によって“正解”は異なる
020 同じ国の中でも立場で変わる貿易の“正しさ”
021 短期の「保護」か? 長期の「自由」か? 時間軸で変わる貿易戦略
022 自由貿易の恩恵の裏にある代償に目を向ける時代へ
023 経済のグローバル化と「環境と経済のジレンマ」
Column 比較優位を唱えた「デヴィッド・リカード」
Part4 トランプ関税で大きな注目を集めた!
国と国の貿易に影響を与える「関税」とは?
024 「 関税」の基本を知っておこう
025 従価税・従量税・混合税──関税の3つのタイプ
026 関税が価格に与えるインパクトと「為替レート」
027 関税が企業の行動をどう変えるのだろうか?
028 日本がかけている関税、かけられている関税
029 見えない“もうひとつの関税”「非関税障壁(NTBs)」とは?
Column GATTにつなが