出版社内容情報
打ち上げに成功した国産ロケット「H3」を待ち受けているのは、宇宙産業における「回収・再利用」の流れだ。米スペースXの「ファルコン9」など、打ち上げ後にメインエンジンを搭載する「第1段」を回収し、再利用するタイプの打ち上げロケットが主流になりつつある。
H3は、第1段を回収せず、低コスト化と安定した打ち上げを実現できる「究極の使い捨て型ロケット」を目指している。本来は小型のロケットエンジンに向いている「エキスパンダー・ブリード・サイクル」を、大型ロケットであるH3のメインエンジン「LE-9」に採用したのも、構造がシンプルで製造コストを削減できるという理由からだ。
ファルコン9を含め、欧州アリアンスペースの「アリアン」や米ブルーオリジンの「ニューグレン」など競合機との技術的な違いを整理。量産してさらなるコストダウンを実現し、「格安で信頼性の高いロケット」として長期間運用できるのか。それとも回収・再利用の流れにのまれて埋没してしまうのか。技術的側面とその市場価値を、科学技術ジャーナリストの松浦晋也氏が解説する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
104
打ち上げ成功までの苦闘の十年間を振り返り、H3ロケットの技術の神髄を詳細かつ的確に解説した素晴らしい本。日本のロケットに成算があるのか不安だったが、著者の「H3は国際的な価格競争力を持つ」との断言がとても心強い。ただ、H3の競争力は所謂「オールドスペースロケット」の分野であり、スペースXやブルーオリジンは、今や、第1段エンジンを回収・再利用するニュースペースという新たなフェーズに突入している。スターリンクで自ら需要を創造するなどの構想にも畏れ入る。H3物語に感動しつつ、今後のサバイバルは大変だと実感する。2025/02/09
とも
13
日本のロケットH3の詳細、H-II時代からの歴史、競合国の状況など。自動車部品の流用でコストカットのくだりが興味深い。2025/01/14
pirorikin kato
3
H2AロケットからH3ロケットへ―何がどう進化したのか。開発の舞台裏や打ち上げまでの苦闘、さらには他国ロケットとの比較までを丁寧に掘り下げた、読み応えのある解説書だった。 特に、コストを半分に抑えるために取り入れられた技術の工夫や選択の背景が詳しく解説されていて、とても興味深かった。ターボポンプの試験が宮城県の角田宇宙センターで行われていたことを知ったときは、思わず「じ、地元で!?」と驚いてしまった。2025/05/10
ゼロ投資大学
2
宇宙事業で快進撃を続けるスペースXに追いつき追い越すため、日本の国産ロケットに注目が集まっている。スペースXは部品と製造工程を極限まで減らし、コストを圧縮することで他社への競争優位性を確保することができた。地球軌道に大量の衛生を打ち上げ、そのネットワークを使って通信を行うスターリンクは多くの国々で利用されるようになった。日本には他者には真似できない独自の技術を有する企業も多いので、失敗を恐れずチャレンジしてほしい。2025/02/08
Go Extreme
2
H3ロケット概要: JAXAのHIIIA/Bの後継機 開発コンセプトー低価格・高信頼性・柔軟性 コストーHIIIA/Bと比較約50億円↓ 技術的特徴: エンジン技術ー過去の運用で蓄積した技術活用 LE-9はエキスパンダー・プリード・サイクル採用 製造効率ー年間6機程度の打ち上げ 市場競争と課題: 競争環境ースペースX等の回収型ロケットと競争激化 H3は究極の使い捨て打ち上げ機 課題ー射場へのアクセス・衛星の搬入等物流面 将来展望: 次世代開発ー2030年代アップグレードプラン 国際競争力ー円安→競争力↑2025/01/23